会計や原価計算の現場では、「機能別分類」と「形態別分類」という言葉をよく耳にします。しかし、両者の違いや使い分けを正しく理解している方は意外と少ないのではないでしょうか。
本記事では、経理初心者から中級者まで理解しやすいように、具体例を交えて丁寧に解説します。
また、IFRS(国際会計基準)を適用した場合の損益計算書や包括利益計算書での表示方法についても触れます。
機能別分類とは?経営上の目的で原価を分類
機能別分類とは、会社の経営において原価がどのような機能のために発生しているかに基づき、費用を分類する方法です。つまり「どの部門・どの活動で原価が使われたのか」を明確にするための分類です。
機能別分類で扱う経費の例
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販売費関連:広告宣伝費、出荷運送費、販売調査費、販売事務費
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製造関連:主要材料費、補助材料費、修繕材料費
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人件費関連:直接賃金、間接作業賃金、手持賃金
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その他:倉庫費、掛売集金費、企画費、技術研究費
機能別分類のメリットは、経営上の意思決定や外部報告に必要な情報をわかりやすく提供できることです。例えば、製造原価と販売費を明確に区分することで、利益率の分析や部門別コスト管理が容易になります。
形態別分類との違い
形態別分類は、原価を発生した形態に基づいて分類する方法です。具体的には、以下の3つに分けられます。
| 分類 | 内容 |
|---|---|
| 材料費 | 製品製造に使用された材料の消費による原価 |
| 労務費 | 労働力の消費による原価 |
| 経費 | 材料費・労務費以外の消費や費用 |
形態別分類のメリットは、製造過程で消費した材料や労働力の量を明確に把握できることです。IFRSにおいては、形態別分類のことを「性質別分類」と呼ぶこともあります。
IFRS適用時の損益計算書・包括利益計算書での表示
IFRSを適用した場合、損益計算書や包括利益計算書では、費用項目を次のどちらかで表示することができます。
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機能別分類表示
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売上原価、販売費及び一般管理費など、経営上の機能ごとに費用を分類
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日本基準に近く、経営分析に活用しやすい
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性質別分類表示(形態別分類に相当)
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原材料費、減価償却費、人件費など発生の形態ごとに分類
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原価構造の分析や比較に便利
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どちらの分類を選択するかによって、財務諸表の見え方や分析のしやすさが変わるため、企業の目的に応じて判断が必要です。
機能別分類を理解して正しく原価計算するポイント
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原価の発生目的を意識して分類する
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販売費・一般管理費などの機能別科目に正しく振り分ける
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IFRSを適用する場合、損益計算書の表示方法との整合性を確認する
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定期的に分類基準を見直し、経営判断に役立つ情報を維持する
正しい分類は、原価計算の精度向上だけでなく、財務分析や経営判断の質向上にも直結します。
まとめ
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機能別分類は、原価が発生した経営上の機能で費用を分類する方法
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形態別分類(性質別分類)は、原価の発生形態で分類する方法
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IFRSでは、損益計算書・包括利益計算書において、機能別表示と性質別表示のどちらかを選択可能
原価計算を正確に行うことは、企業経営やIFRS適用において非常に重要です。本記事で解説したポイントを押さえ、適切な分類と表示を実施しましょう。
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