流動資産は、企業の財務状態を理解するうえで欠かせない基本の概念です。
しかし「現金のこと?」「売掛金と何が違うの?」と疑問に感じる初心者も少なくありません。
本記事では、簿記・会計の実務経験にもとづき、流動資産の意味から主な種類、チェックすべきポイントまでわかりやすく解説します。
流動資産とは
流動資産とは、1年以内に現金化できる資産、または営業サイクル(仕入→製造→販売→回収)で発生する資産のことです。
貸借対照表(バランスシート)では左上に表示され、企業の短期的な資金余力を判断する重要な指標になります。
ただし、含まれているからといって、「すぐ現金になる」とは限りません。売掛金は回収リスクがあり、在庫は販売までに時間を要します。これを理解しておくことが、貸借対照表を読み解く第一歩です。
流動資産の主な種類
● 現金預金
会社が業務で使用する現金・普通預金・当座預金のほか、1年以内に満期を迎える定期預金も含みます。
● 受取手形
顧客が支払いを約束した有価証券。満期日に換金できますが、倒産などのリスクには注意が必要です。
● 売掛金
商品やサービスを提供した後、後日入金される代金を指します。企業にとって重要な営業債権ですが、回収不能リスクもあります。
● 商品
仕入れたまま販売できる物品。在庫として保有している状態を指します。
● 製品
会社が自ら製造したもの。形があるモノだけでなく、無形サービスやノウハウも含まれます。
● 前渡金
仕入や材料購入に際して、先に支払った金額。いわゆる「前金」のこと。
● 有価証券(短期)
売買目的や満期保有目的のうち、1年以内に満期が到来するもの。
● 未収入金
営業外の取引による債権。たとえば家賃収入の後払い分など。
● 前払費用
継続的なサービスの利用料を先払いしたもの。決算時点で未提供のサービス部分だけが対象となります。
● 貸倒引当金(流動資産のマイナス項目)
売掛金や受取手形が万が一回収不能になった場合を見込んで、事前に計上する引当金。
流動資産のチェックポイント
流動資産を読む際、必ず注目すべきは「現金預金」と「在庫」のバランスです。
● 在庫は“現金化まで時間がかかる資産”
在庫が増えすぎると、以下のような問題が起こります。
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現金が減る
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保管コストが増える
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劣化や陳腐化で価値が下がる
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販売できず不良在庫化する可能性
適正な在庫量と発注点の管理は、企業の安全性に大きく影響します。
● 売掛金・受取手形は“回収できて初めて現金”
金額が大きくても、入金されなければ意味がありません。
取引先の信用状態や回収状況は必ず確認しましょう。
まとめ|流動資産を理解すれば、貸借対照表が一気に読みやすくなる
流動資産は、企業の資金繰りや経営の健全性を判断するうえで欠かせない項目です。
「1年以内に現金化できるもの」「営業サイクルで発生するもの」という基本を押さえつつ、
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在庫は過剰になっていないか
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売掛金はきちんと回収できているか
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手形のリスクは適切に管理されているか
といったポイントを見ることで、貸借対照表の理解が一段と深まります。
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