企業経営や個人事業に欠かせない「減価償却」。
建物や機械などの固定資産は、時間が経つにつれて価値が減っていきます。
この価値の減少を「費用」として少しずつ計上していくのが減価償却のしくみです。
この記事では、
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減価償却の基本的な考え方
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計算方法(定額法・定率法)
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会計上の仕訳の仕方
まで、初心者にも分かりやすく整理して解説します。
✅ 減価償却とは?
減価償却とは、建物や車両、機械、パソコンなどの固定資産の価値が時間とともに減少する分を、費用として毎年少しずつ計上する会計処理のことです。
たとえば、100万円のパソコンを購入して5年間使用する場合、購入時に全額を費用にせず、
「毎年20万円ずつ費用に分けて計上する」という考え方です。
こうすることで、収益と費用の対応関係(費用収益対応の原則)が保たれ、より正確な利益計算が可能になります。
🎯 減価償却の目的
減価償却の目的は、大きく分けて次の2つです。
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利益を正確に算出するため
資産を取得した年に全額を費用とすると、利益が大きくぶれてしまいます。
減価償却を行うことで、資産の使用期間に応じて費用を分配し、正確な利益を計算できます。 -
税金を適正に計算するため
法人税法でも、減価償却を行うことを前提として損金算入を認めています。
正しく減価償却を行わないと、税金を余分に支払ってしまう可能性もあります。
🧱 減価償却できる資産・できない資産
減価償却できる資産(=価値が減っていくもの)
資産の種類 | 具体例 |
---|---|
建物 | 事務所、店舗、倉庫など |
機械装置 | 製造設備、農業用機械など |
車両運搬具 | 自動車、バイクなど |
器具備品 | パソコン、デスク、冷暖房機器など |
無形固定資産 | ソフトウェア、特許権など |
減価償却できない資産(=価値が減らないもの)
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土地
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美術品・骨董品(一定条件を満たすもの)
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建設中の資産(未使用のもの)
💡 減価償却の計算方法
減価償却の計算には、主に次の3つの方法があります。
① 定額法(ていがくほう)
毎年、同じ金額を費用として計上する方法です。
耐用年数が5年、取得価額が100万円の資産なら、毎年20万円を減価償却費として計上します。
計算式:
取得価額 × 定額法の償却率 = 年間の減価償却費
例)取得価額100万円、耐用年数5年
→ 100万円 × 0.2(償却率)= 20万円/年
② 定率法(ていりつほう)
初年度ほど多く、年数が経つほど少なくなるように償却する方法です。
資産の価値が初期に大きく減少するようなケース(例えばパソコンなど)に適しています。
計算式:
(取得価額-前年までの減価償却累計額)× 定率法の償却率
③ 生産高比例法(せいさんだかひれいほう)
使用量や生産量に応じて償却額を計算する方法。
機械などの稼働量が年度によって異なる場合に採用されます。
📘 減価償却費の仕訳方法
直接法の場合
固定資産の帳簿価額を直接減らして記帳する方法です。
間接法の場合
減価償却累計額という別勘定で管理する方法です。一般的にはこちらを使います。
売却・廃棄時の仕訳例
固定資産を売却・廃棄する際は、未償却残高(=帳簿価額-累計償却額)を確認して仕訳します。
🧾 減価償却と決算書の関係
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貸借対照表(B/S):資産の減少を「減価償却累計額」として表示
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損益計算書(P/L):当期の減価償却費を「販売費及び一般管理費」や「製造原価」として計上
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キャッシュフロー計算書:減価償却費は「営業活動によるキャッシュフロー」の加算項目(非現金費用)として扱われます。
🏢 減価償却を行わないとどうなる?
もし減価償却を行わない場合、
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会計上の利益が実態よりも多く見えてしまう
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税務上、損金に算入されないため法人税が増える
といったリスクがあります。
法人・個人を問わず、正しく減価償却を行うことは節税と正確な財務管理に欠かせません。
📊 固定資産管理を効率化するには
減価償却や固定資産の管理は複雑になりがちです。
「耐用年数の確認」「資産台帳の更新」「仕訳の記録」などを自動化できるクラウド会計ソフトや固定資産管理システムを活用すると、手間を大幅に削減できます。
まとめ:減価償却の基本を正しく理解しよう
減価償却は「面倒そう」と思われがちですが、
正しく理解すれば企業経営の健全化・節税対策・資産管理の精度向上につながります。
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