企業の経営ニュースなどで「減資を実施」という言葉を耳にすることがあります。
一見「会社の経営が悪化しているのでは?」と思われがちですが、実は経営改善や節税のための前向きな手段として減資が行われることも多いのです。
この記事では、会計の専門家が「減資とは何か」から「有償減資・無償減資の違い」「それぞれのメリット・デメリット」まで、初心者にもわかりやすく解説します。
🔹減資とは?意味と基本的な仕組み
減資(げんし)とは、会社の「資本金」を減らす手続きのことをいいます。
資本金とは、株主から出資された会社の基礎資金。これを減らすというのは、「会社の規模を小さくする」という意味ではなく、財務内容を整理したり、節税を目的にすることが主な理由です。
減資の主な目的は次の3つです:
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欠損金(累積赤字)の補填による経営の立て直し
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株主への資金払い戻し(配当)
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資本金を減らすことでの節税対策
減資には「有償減資」と「無償減資」の2種類があり、目的や会計処理が異なります。
💰有償減資とは?株主に払い戻すタイプの減資
有償減資(ゆうしょうげんし)とは、資本金を減らし、その分を株主に払い戻すタイプの減資です。
つまり「資本金を減らし、現金を外部(株主)に出す」取引です。
📘有償減資の会計処理(基本例)
たとえば、資本金1,000,000円を減らして株主に払い戻す場合:
借方 | 貸方 |
---|---|
資本金 1,000,000円 | その他資本剰余金 1,000,000円 |
その他資本剰余金 1,000,000円 | 未払配当金 1,000,000円 |
このように、会計上は資本金の減少と配当金の支払いがセットになります。
税務上は「みなし配当」が発生することがあり、法人税法上の取扱いに注意が必要です。
✅有償減資のメリット
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株主に資金を払い戻し、投資リターンを提供できる
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配当が出せない時期でも、株主との関係を維持できる
⚠️有償減資のデメリット
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実際に現金が社外に流出するため、資金力が減少する
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将来的な投資余力や経営体力が低下するリスクもある
🧾無償減資とは?資金を動かさない減資
無償減資(むしょうげんし)とは、資本金を減らしても資金の流出がないタイプの減資です。
帳簿上の「資本金」から「欠損金(累積赤字)」に振り替えを行い、財務内容を改善します。
📘無償減資の会計処理(例)
資本金1,000,000円を減少し、欠損金を補填する場合:
借方 | 貸方 |
---|---|
資本金 1,000,000円 | その他資本剰余金 1,000,000円 |
その他資本剰余金 1,000,000円 | 繰越利益剰余金 1,000,000円 |
このように、純資産内の項目を振り替えるだけで、現金の動きはありません。
✅無償減資のメリット
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累積赤字を解消し、財務状態を改善できる
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金融機関からの融資を受けやすくなる
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資本金1億円以下にすることで、中小企業の税制優遇を受けられる(節税効果)
⚠️無償減資のデメリット
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資本金が減ることで、企業の信用力が下がる可能性がある
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取引先や銀行から「経営不安」と見られるリスクもある
📊減資を検討する前に知っておきたいポイント
減資は「経営危機」だけでなく、「財務戦略」として行われることも多いです。
たとえば次のようなケースでは、減資が有効に働く場合があります。
状況 | 減資の目的 | 減資の種類 |
---|---|---|
赤字が続いて欠損金が多い | 経営の立て直し | 無償減資 |
株主に資金を還元したい | 配当・リターン提供 | 有償減資 |
資本金1億円を超えており税負担が大きい | 節税 | 無償減資 |
ただし、信用力の低下や税務上の扱いなど注意点も多いため、実施の際は税理士や公認会計士に相談することをおすすめします。
🧭まとめ:減資は「経営改善」と「節税」のチャンスにもなる
「減資」と聞くとネガティブな印象を持たれがちですが、実際には経営再生や節税のための重要な手段です。
特に中小企業では、資本金の調整によって税制優遇を受けるなど、財務面の最適化につながります。
ただし、信用力への影響もあるため、目的を明確にして慎重に判断することが大切です。
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