企業の財務や会計業務を行う上で、「満期保有債券」という言葉を耳にすることがあります。
しかし、具体的に何を指すのか、どのように帳簿に記録すべきかを理解している人は意外に少ないです。この記事では、満期保有債券の基本から仕訳方法まで、初心者でもわかりやすく解説します。
満期保有債券とは?
満期保有債券とは、満期まで保有する意図で購入する債券のことです。別名「満期保有目的債券」とも呼ばれ、主に国債や社債などが該当します。
満期保有債券は、取得原価を貸借対照表の価額として計上します。ただし、債券を額面より高額または低額で取得した場合、取得時の差額が金利調整分と認められるときは、償却原価法に基づき計算された金額で貸借対照表価額を修正する必要があります。
満期保有債券の考え方
有価証券は、保有目的によって区分されます。
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満期保有債券:利息目的で長期間保有。原則、売却は認められません。
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売買目的有価証券:資金運用や売却益を目的に短期的に保有。
ただし、企業側に正当な理由があれば、満期保有債券を売却することも可能です。正当な理由には以下が含まれます。
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資金運用方針の変更や特定状況の発生による保有目的区分の変更
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報告に基づき、保有目的区分の変更があった場合
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株式の追加取得・売却による持分比率の変動に伴う区分変更
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法令・会計基準の改正による区分変更
(※金融商品実務指針第80項「有価証券の保有目的区分の変更」より引用)
満期保有債券の仕訳例
例えば、次のような取引があったとします。
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公社債を満期保有目的で 200,000円 購入
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購入手数料 5,000円 は現金で支払った
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債権代金 200,000円 は小切手で支払った
この場合の仕訳は次の通りです。
| 借方 | 貸方 | 金額 |
|---|---|---|
| 満期保有目的債券 | 当座預金 | 200,000円 |
| 現金 | 5,000円 |
このように、購入手数料も含めて債券勘定に加える点がポイントです。
満期保有債券の会計処理ポイント
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利息収益の計上
満期保有債券は長期保有のため、一定期間ごとに利息が発生します。利息は収益として計上し、決算書に反映させます。 -
売却は原則不可
ただし、前述の正当な理由がある場合は例外として売却可能です。 -
償却原価法の適用
債券の取得価額と額面の差額を金利調整として扱い、計算した償却原価で帳簿に計上します。
まとめ
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満期保有債券は満期まで保有する目的で購入する債券
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取得原価または償却原価法に基づく金額で帳簿計上
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利息収益を期間配分し、決算に反映
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原則売却不可だが、正当な理由があれば売却可能
満期保有債券を正しく理解しておくことで、貸借対照表の資産計上や利息収益の管理がスムーズになり、企業の財務管理にも役立ちます。
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