自然災害や火災などによる被害は、企業にとって予期せぬ大きな損失をもたらします。
こうした場合に発生する損失を会計上「災害損失」として処理し、税務上の優遇制度を活用することが重要です。
この記事では、災害損失の基本、会計処理の方法、税務上の取り扱い、特別勘定や欠損金の活用について初心者でもわかりやすく解説します。
災害損失とは
災害損失とは、商品や建物などの資産が災害により損害を受けた場合に生じる損失や費用のことを指します。
災害には、以下のようなものが含まれます。
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自然災害:地震、台風、洪水、土砂崩れなど
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人為的災害:火災、事故、テロなど
災害損失の具体例
| 災害の例 | 損失・費用の例 |
|---|---|
| 地震で建物の一部が倒壊 | 倒壊部分の帳簿価額、修繕費、がれき撤去費用、復旧費用 |
| 土砂崩れで倉庫内の商品が汚染 | 汚染された商品の帳簿価額、土砂撤去費用、清掃費用 |
※被災者への見舞金や売上減少などは直接的な災害損失には含まれません。
※損害保険で補填される場合は、補填額を差し引いた金額が災害損失になります。
災害損失の会計処理
災害損失の会計処理は、損失額が確定している場合と未確定の場合で方法が異なります。
1. 損失額が確定している場合
被災した資産を取り崩す場合や修繕費を計上する場合に、以下のように仕訳します。
資産の取り崩し例(商品)
修繕費や撤去費用の支払い例
これらは特別損失として損益計算書に表示されることが多いです。
2. 損失額が未確定の場合(災害損失引当金)
被災直後に正確な損失額がわからない場合は、災害損失引当金を設定して費用を前倒しで計上します。
引当金計上例
翌年度に損失額が確定したら、引当金から取り崩します。
引当金取り崩し例(車両の廃棄)
災害損失の税務上の取り扱い
災害損失は、会計上で費用計上されていれば税務上も損金として認められます。
税務上のポイント
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滅失・損壊した資産の損失
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商品、原材料、固定資産の損失
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損壊した資産の除去費用、土砂撤去費用も含まれる
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資産の評価損
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災害で時価が下落した資産の評価損も損金算入可能
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例:仕入価額10万円の木材が3万円でしか販売できない場合 → 評価損7万円
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復旧費用
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原状回復のための修繕費は損金算入可能
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補強や資本的支出か不明な場合、30%を修繕費として計上する方法が認められる
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災害損失特別勘定と欠損金
災害損失特別勘定
税務上の勘定科目で、会計上の引当金と同じ性質を持ちます。
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災害にかかる支出を前倒しで負債計上
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相手勘定は「災害損失特別勘定繰入損」など
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申告時には「災害損失特別勘定に関する明細書」の添付が必要
災害損失欠損金
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欠損金とは、法人税の課税所得がマイナスになること
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災害損失欠損金は、災害によって生じた欠損金部分
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青色申告事業者であれば、繰戻還付を選択可能
まとめ
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災害損失は、災害によって資産が被害を受けた場合に発生する損失や費用
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会計処理は、損失額確定時と未確定時で異なり、引当金の利用が可能
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税務上は、会計で損失計上すれば損金算入できる
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災害損失特別勘定や欠損金の活用で税負担を軽減できる
正しい会計処理と税務上の取り扱いを理解しておくことで、災害発生時の事業復旧や資金計画がスムーズになります。
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