会計処理を行う上で「発生主義」という言葉を耳にしたことはありますか?特に法人や中小企業での会計処理、決算や財務報告を理解するためには欠かせない基本概念です。
この記事では、発生主義の意味、メリット・デメリット、適用シーン、さらに現金主義や実現主義との違いを初心者向けにわかりやすく解説します。
発生主義とは
発生主義とは、取引や権利・義務が発生した時点で会計処理を行う方法です。現金の入出金は関係なく、取引が発生した時点で費用や収益を認識します。
具体例
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サービスの契約を締結した時点で費用を計上
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支払予定の賞与は、支払いが確定した時点で引当金として計上
つまり、将来の現金の動きではなく、取引の実態に基づいた正確な財務状況を把握することが可能です。
発生主義のメリット
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入出金を伴わない取引も把握できる
掛取引や未払い金など、まだ現金が動いていなくても会計処理が可能。資金繰りの計画や納税資金の準備に役立ちます。 -
正確な財政状況がわかる
取引発生時点で費用や収益を計上するため、期間損益の正確な計算が可能です。引当金の計上や減価償却も含め、企業の経営実態をより適切に反映できます。
発生主義のデメリット
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入出金の実態をつかみにくい
発生主義では現金の動きと会計処理がずれる場合があります。そのため、現金管理や資金繰りの把握がやや複雑になります。 -
会計処理が手間になる
取引発生時と入出金時の両方で仕訳処理が必要です。掛仕入の場合は、商品受け取り時に仕入計上、支払時に買掛金を減少させる仕訳を行います。
発生主義が適用される代表的なシーン
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掛仕入:商品や原材料の受け取り時点で仕訳
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未払金:サービス提供や物品受け取り後の未払い費用を計上
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引当金:賞与、退職給付、貸倒引当金など将来費用の見積計上
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減価償却:固定資産の使用に応じて費用を配分
発生主義の会計処理の流れ(仕訳例)
掛仕入の例
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商品10万円を掛取引で仕入れた場合
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 仕入 100,000円 | 買掛金 100,000円 |
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支払時
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 買掛金 100,000円 | 当座預金 100,000円 |
発生時に費用を認識し、支払い時に負債を消滅させることで、財務状況を正確に反映できます。
発生主義と実現主義・現金主義の違い
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実現主義:収益は現金化や権利確定をもって認識する方法。上場企業の収益認識基準に近い
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現金主義:現金の受け渡し時点で認識する簡便な方法。小規模事業者のみ選択可能
| 項目 | 発生主義 | 実現主義 | 現金主義 |
|---|---|---|---|
| 認識基準 | 取引発生時 | 収益の実現時 | 現金受渡時 |
| メリット | 正確な期間損益 | 収益確定の安全性 | 簡単・理解しやすい |
| デメリット | 処理が複雑 | 未回収リスクあり | 財務状況の正確性低い |
| 適用 | 法人・大中規模企業 | 上場企業など収益認識 | 小規模事業者(青色申告) |
まとめ
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発生主義は費用・収益を取引発生時に認識する会計処理
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将来の入出金に関係なく、正確な財政状況の把握に適している
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掛取引、未払金、引当金、減価償却など幅広く適用される
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現金主義や実現主義と使い分けることで、企業の実態に即した会計処理が可能
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