企業会計や確定申告でよく耳にする「発生主義」。
一方で、「現金主義」や「実現主義」との違いが曖昧な方も多いのではないでしょうか?
この記事では、公認会計士の監修のもと、発生主義の意味・特徴・メリット・デメリット・適用シーンをわかりやすく解説します。
個人事業主から経理担当者まで、会計の基礎をしっかり理解したい方におすすめの内容です。
🔍 発生主義とは?基本の考え方をわかりやすく解説
発生主義(Accrual Basis)とは、現金の入出金に関係なく、取引や義務・権利が発生した時点で収益や費用を認識する会計処理の方法です。
たとえば:
-
商品を掛けで販売 → 売上は入金前でも「発生した時点」で計上
-
賞与を支払う予定 → 実際の支払前に「賞与引当金」として計上
つまり、「お金が動いたとき」ではなく、「経済的な取引が発生したとき」に会計処理を行うのがポイントです。
💡 発生主義のメリット
① 入出金を伴わない取引も把握できる
現金の動きだけでは見えない「将来の入金・出金予定」も見通せます。
これにより、資金繰りの予測や納税計画の立案がしやすくなります。
② 正確な財政状況を把握できる
発生主義では、収益と費用を「発生した期間」に正確に対応づけられるため、
期間損益の正確な算定が可能になります。
企業の経営実態をよりリアルに反映でき、経営判断にも役立ちます。
⚠️ 発生主義のデメリット
① 現金の動きがわかりにくい
実際の入金や支払が遅れる場合、帳簿上の利益と現金残高にズレが生じます。
資金ショートのリスクを見逃さないためには、キャッシュフロー管理も重要です。
② 会計処理が複雑になる
発生時点と支払時点の両方で仕訳が必要なため、
現金主義に比べて会計処理の手間が増えます。
特に中小企業では、経理担当者の負担が増えるケースもあります。
🏢 発生主義が使われる代表的なシーン
| 取引の種類 | 内容の説明 |
|---|---|
| 掛仕入 | 商品を受け取った時点で仕入計上。支払いは後日。 |
| 未払金 | 代金をまだ払っていないサービスや設備購入など。 |
| 引当金 | 将来発生が予想される費用(例:賞与・退職金など)。 |
| 減価償却 | 固定資産の価値を使用期間に応じて費用配分。 |
🧮 発生主義の会計処理例(仕訳)
例:A社から商品10万円を掛取引で仕入れた場合
後日、買掛金を支払った際の仕訳:
このように、発生時と支払時の両方で仕訳を行う点が、発生主義の特徴です。
⚖️ 実現主義・現金主義との違いを比較
| 会計基準 | 認識のタイミング | 特徴 |
|---|---|---|
| 発生主義 | 権利・義務が発生した時点 | 最も一般的。法人会計の原則。 |
| 実現主義 | 取引が「実現」した時点(収益) | 収益認識基準で採用される考え方。 |
| 現金主義 | 現金の入出金時点 | シンプルだが、法人では原則不可。 |
👉法人会計では「発生主義+実現主義」が基本。
一方で、個人事業主(青色申告)の場合は、一定条件を満たせば「現金主義」を選択可能です。
(※前々年の事業所得+不動産所得の合計が300万円以下の場合など)
🧭 発生主義を理解することの重要性
発生主義は、正確な期間損益の算定と健全な経営判断のための基礎となる考え方です。
中小企業でもクラウド会計ソフトを活用することで、複雑な処理を自動化し、
手間をかけずに正確な会計を実現できます。
💬 もし「会計処理が難しい」「何から始めればいいか分からない」と感じる場合は、
税理士や会計ソフトの専門サポートを活用するのがおすすめです。
📘 まとめ:発生主義で企業の実態を正確に把握しよう
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 発生主義とは | 権利・義務の発生時点で取引を認識する会計方法 |
| メリット | 将来の収支予測が可能・財政状況を正確に把握 |
| デメリット | 現金の流れが見えにくい・処理が複雑 |
| 法人会計 | 原則、発生主義を採用 |
| 個人事業主 | 小規模事業者は現金主義も選択可 |
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