企業の資金管理や経理実務に携わっていると、「短期貸付金とは何か?」「従業員や取引先に資金を貸した場合の仕訳や税務は?」と疑問を持つ方も多いでしょう。
短期貸付金は比較的シンプルな勘定科目ですが、返済期間による区分、利息計上のルール、従業員貸付に関わる所得税の扱いなど、正確に理解したいポイントがいくつかあります。
この記事では、初心者にもわかりやすく、実務で判断に迷いやすい点を丁寧に解説します。
短期貸付金とは
短期貸付金とは、会社が取引先・子会社・役員・従業員などに対して、1年以内の返済期間で貸し付けた金銭を指す勘定科目です。
基準となる契約は「金銭消費貸借契約」または「準消費貸借契約」で、返済期限が 1年以内 → 短期貸付金、1年超 → 長期貸付金 と区分されます。
法人と個人事業主では利息の計上が異なり、
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法人の場合:受取利息
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個人事業主の場合:雑収入
として処理する点も押さえておきましょう。
短期貸付金として処理される主なケース
短期貸付金は、日常の経理業務でも比較的登場する機会の多い勘定科目です。
以下のようなケースが典型例です。
● 子会社・取引先へ一時的に資金を貸す場合
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資金繰りが厳しい子会社に対して、運転資金を短期間だけ融資する
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下請企業が一時的に必要とする資金を支援する
※このような貸付は業務上必要と判断される場合が多く、利率を適正に設定して行うのが一般的です。
● 従業員貸付(福利厚生としての貸付)
たとえば、
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住宅取得のための資金
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冠婚葬祭に伴う一時費用
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災害・病気による緊急の生活資金
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傷病に伴う一時的な資金
このように、社員の生活を支える目的で貸し付けられるケースも多く見られます。
従業員や役員へ貸付ける場合の税務(重要ポイント)
従業員・役員への貸付は、金融機関よりも有利な条件を設定することが多く、
無利息・低利息で貸した場合は「経済的利益」とみなされる可能性があります。
これは、従業員が本来負担すべき利息分の差額が「給与所得」として扱われるためで、会社は源泉徴収義務を負うことになります。
国税庁の考え方(要点をわかりやすく整理)
国税庁は次のように明確に定めています。
貸付利率が「特例基準割合(その年に国税庁が公表する利率)」以上であれば、原則として給与課税しない。
例:平成26年の特例基準割合は 1.9%
→ 利率が1.9%未満の場合は給与課税の対象となる可能性がある。
ただし、以下の3つに該当する場合は課税されません。
(1) 災害・病気など、臨時に多額の資金が必要な場合
→ 合理的な金額・返済期間であれば非課税
(2) 会社の借入金の平均調達金利など「合理的な利率」を設定した場合
→ 自社の借入利率が根拠となるケース
(3) 利息差額が年間5,000円以下の場合
→ 少額不追及の規定に該当
これらに該当しない場合は、通常の利率との差額が給与とみなされます。
短期貸付金を扱う際の実務上の注意点
短期貸付金は「単にお金を貸すだけ」ではなく、以下の点に注意して管理することが重要です。
● 契約書を必ず作成する
金銭消費貸借契約書や準消費貸借契約書を作ることで、返済条件や利率が明確になり、税務上のリスクを防げます。
● 利率は合理性のある数値で
特例基準割合や自社の平均借入金利を目安に設定することが推奨されます。
● 回収管理を徹底する
短期貸付金は流動資産であり、未回収が続けば資金繰りに影響します。
返済スケジュールの管理は必須です。
● 従業員貸付は源泉徴収リスクに注意
無利息で貸すなど、安易に行うと給与課税の対象となり得ます。
まとめ:短期貸付金とは何かを正しく理解し、適切に運用しよう
短期貸付金とは、会社が1年以内の返済で貸した資金を処理するための勘定科目です。
従業員貸付や取引先支援など多くの場面で利用されますが、利率の設定や源泉徴収の有無など、税務上の注意点がある点がとても重要です。
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返済期間で短期・長期を区分する
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利息は法人なら受取利息、個人事業主なら雑収入
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無利息・低利息の貸付は給与課税のリスク
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特例基準割合や合理的利率を参考に
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契約書の作成と返済管理は必須
これらを押さえることで、短期貸付金を適切かつ安全に運用できます。
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