企業経営において、利益を正確に把握するためには棚卸資産の原価管理が不可欠です。
在庫の原価を正しく把握できなければ、利益計算が不正確になり、経営判断や戦略に大きな影響を与える可能性があります。
そんなときに役立つのが移動平均法です。この記事では、移動平均法の概要や計算方法、メリット・デメリット、総平均法との違いを初心者にもわかりやすく解説します。
移動平均法とは?
移動平均法は、棚卸資産(在庫)の仕入れごとに平均単価を再計算する方法です。
計算された平均単価は、売上原価や期末棚卸資産の評価に使用されます。
ポイントは次の通りです:
-
仕入れのたびに単価を算出するので、期中でも正確な原価が把握できる
-
売上原価を計算する際に役立ち、利益の予測精度が向上する
移動平均法の必要性
移動平均法などの原価管理が重要な理由は以下です:
-
原価の無駄や過不足を把握できる
-
サービス業などの人件費を含む原価が正確に把握できる
-
適正な販売価格を設定できる
-
損益分岐点の計算が明確になる
正確な原価管理は、企業の経営戦略や利益計画に直結します。
移動平均法の計算公式
移動平均法の平均単価は以下の式で計算します:
-
受入棚卸資産取得原価:仕入れた商品の金額
-
在庫棚卸資産金額:仕入れ前の在庫金額
計算例
前提条件:
-
2月1日:在庫100個・単価100円・仕入原価10,000円
-
3月1日:仕入れ50個・単価130円・仕入原価6,500円
-
4月1日:仕入れ120個・単価90円・仕入原価10,800円
3月1日の平均単価:
4月1日の平均単価:
このように、仕入れるたびに平均単価を再計算します。
商品有高帳を使った管理方法
商品有高帳は、在庫状況を記録する補助簿です。仕入れや売上のたびに数量・単価・金額を記入します。
例:
| 日付 | 適用 | 受入数量 | 単価 | 金額 | 払出数量 | 単価 | 金額 | 残高数量 | 単価 | 金額 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 5/10 | 仕入 | 100 | 500 | 50,000 | 100 | 500 | 50,000 | |||
| 5/11 | 仕入 | 200 | 600 | 120,000 | 300 | 566 | 169,800 | |||
| 5/12 | 売上 | 250 | 566 | 141,500 | 50 | 566 | 28,300 |
-
単価は仕入れごとに再計算され、売上時の原価も平均単価で統一されます。
移動平均法のメリット・デメリット
メリット
-
棚卸資産をリアルタイムで評価可能
-
最新の平均単価で売上原価を計算できる
-
在庫原価のズレによる販売戦略の誤差を防止
デメリット
-
仕入れごとに計算が必要で手間がかかる
-
商品の種類が多い場合、計算負荷が増える
-
中小企業では担当者への負担が大きくなる可能性
総平均法との違い
| 方法 | 計算タイミング | 特徴 |
|---|---|---|
| 移動平均法 | 仕入れごと | リアルタイムで正確な原価管理が可能 |
| 総平均法 | 一定期間まとめて | 計算回数が少なく手間が減るが、期中の原価精度はやや低い |
-
どちらの方法も平均原価法に属します
-
企業の在庫管理の精度や人件費、計算負担を考慮して選択します
まとめ
-
移動平均法は、仕入れるたびに在庫の平均単価を再計算する方法
-
リアルタイムで棚卸資産を評価でき、売上原価や利益計算の精度を向上させる
-
計算の手間はかかるが、在庫管理や経営判断の質を高めることができる
-
総平均法と比較して、精度や管理手間を考慮して選択
移動平均法を理解し、正しく導入することで、企業の原価管理や利益計算の精度が格段に向上します。
こちらもご覧ください
