企業の「本当の稼ぐ力」を測る指標として、世界中で注目されているのが経済的付加価値(EVA:Economic Value Added)です。
EVAは、単なる利益ではなく、資本コストを考慮した“真の経営成果”を示すもので、株主価値を意識した経営に欠かせない指標のひとつです。
この記事では、会計や経営の初心者でも理解できるように、EVAの意味・計算式・見方・日本企業の活用傾向までやさしく解説します。
🔹 経済的付加価値(EVA)とは?
経済的付加価値(EVA)とは、企業がどれだけ「資本コストを超えて利益を生み出したか」を示す指標のことです。
もともとはアメリカのコンサルティング会社スチュワート社(Stern Stewart & Co.)が開発した概念で、企業経営の「収益性」をより正確に評価する目的で使われています。
🔸 EVA = 税引後営業利益(NOPAT) − 総資本コスト
つまり、企業が投資家や債権者から集めた資金を使ってどれだけ利益を生み出したかを測定するものです。
🔹 EVAの計算式とその意味
■ 計算式
EVA=税引後営業利益(NOPAT)−総資本×加重平均資本コスト率(WACC)EVA = 税引後営業利益(NOPAT) − 総資本 × 加重平均資本コスト率(WACC)
ここでの各用語の意味は次のとおりです:
項目 | 意味 |
---|---|
税引後営業利益(NOPAT) | 税金を差し引いた後の営業利益。企業の本業の稼ぐ力を示す指標。 |
総資本 | 自己資本(株主資本)と他人資本(借入金)を含む全体の資金。 |
加重平均資本コスト率(WACC) | 資金を調達するための平均コスト(株主や債権者への期待利回りを反映)。 |
■ EVAの見方
EVAの値 | 意味 |
---|---|
プラス(+) | 企業が資本コスト以上の利益を生み出しており、株主価値を創造している状態。 |
マイナス(−) | 資本コストを下回っており、株主に十分なリターンを提供できていない状態。 |
💡EVAが大きいほど「企業の経営状態が健全で、投資家からの信頼が厚い」ことを示します。
🔹 EVAが重視される理由
日本企業でも、近年「EVA経営」への注目が高まっています。
その背景には、株主価値の最大化を目指す経営への転換があります。
かつての日本企業では、利益よりも雇用維持やシェア拡大を重視する傾向がありましたが、グローバル市場では**資本の効率性(ROICやEVAなど)**が重要視されています。
EVAを活用することで、企業は次のような経営判断を行いやすくなります。
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投資案件が本当に価値を生み出すかを判断
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経営資源を高収益分野へ集中
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社員の成果評価や報酬制度への反映
🔹 【具体例】EVAのイメージを数字で理解しよう
ある企業A社のデータが次のような場合を考えます。
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税引後営業利益(NOPAT):2,000万円
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総資本:1億円
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加重平均資本コスト率(WACC):8%
このときのEVAは以下の通りです:
EVA=2,000万円−1億円×8%=2,000万円−800万円=1,200万円EVA = 2,000万円 − 1億円 × 8\% = 2,000万円 − 800万円 = 1,200万円
👉 EVAが1,200万円のプラスなので、A社は資本コストを上回る利益を生み出しており、株主価値を高める経営をしていると判断できます。
🔹 EVAを活用している日本企業の動き
EVAはもともと欧米企業で広く採用されていましたが、近年では日本企業でも導入例が増えています。
例えば:
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トヨタ自動車:ROIC・EVAを活用し、事業ごとの資本効率を分析
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日立製作所:EVAを経営評価指標に取り入れ、投資判断や報酬制度に反映
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ソニーグループ:資本コストを意識した経営方針を明確化
これらの企業は、グローバル競争の中で「投資家から選ばれる企業」になるために、EVAを積極的に経営指標として取り入れています。
🔹 まとめ:EVAは“資本効率”を可視化する経営指標
ポイント | 内容 |
---|---|
指標名 | 経済的付加価値(EVA:Economic Value Added) |
意味 | 資本コストを考慮した企業の真の利益 |
計算式 | EVA=税引後営業利益 − 総資本×資本コスト率 |
評価基準 | EVAがプラスなら株主価値を創造、マイナスなら価値を減少 |
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