「在庫がどれくらい残っているのか」「原価はいくらか」——。
日々の経理や原価管理を行う中で、これを正確に把握するために用いられるのが 継続記録法(けいぞくきろくほう) です。
この記事では、会計実務経験をもとに、
継続記録法の意味・メリット・棚卸計算法との違い・注意点 を初心者にもわかりやすく解説します。
🔹 継続記録法とは?基本の意味をやさしく解説
継続記録法とは、棚卸資産(商品・材料など)の受け入れや払い出しを日々帳簿に記録し、在庫数・売上数・消費数を継続的に把握する方法 です。
つまり、「今日どれだけ仕入れて、どれだけ売れたのか」「今いくつ在庫が残っているのか」を帳簿上で常に確認できる仕組みのことを指します。
📘 具体的には、
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商品の入荷 → 「受入数量」を記録
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商品の販売や出庫 → 「払い出し数量」を記録
この2つの動きをすべて帳簿(商品有高帳 や 材料元帳)に記録することで、
次のような計算式が成り立ちます。
売上数量・消費数量 = 商品有高帳・材料元帳に記録された払い出し数量
💡 継続記録法のメリット:在庫と原価が「いつでも見える」
継続記録法の最大の利点は、在庫状況や原価をリアルタイムで把握できる 点です。
✅ 主なメリット
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在庫管理が容易
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商品ごとの在庫数を常に帳簿で確認できる。
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過剰在庫や欠品のリスクを減らせる。
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月次決算・損益計算がスムーズ
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在庫数や原価が常に更新されているため、毎月の損益計算も簡単。
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原価計算に対応
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多くの企業で採用されている「原価計算制度」も、継続記録法を前提としている。
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そのため、製造業・小売業・飲食業など、在庫を扱う業種では特に推奨される方法です。
⚖️ 継続記録法と棚卸計算法の違い
継続記録法とよく比較されるのが、棚卸計算法(たなおろしけいさんほう) です。
両者の大きな違いは、「払い出しの記録を行うかどうか」です。
項目 | 継続記録法 | 棚卸計算法 |
---|---|---|
記録内容 | 受入・払い出しを日々記録 | 受入のみ記録 |
在庫数の把握方法 | 帳簿上で常に把握可能 | 期末に実地棚卸で確認 |
原価計算 | 可能(随時計算) | 不可(期末でのみ算出) |
メリット | 月次損益や在庫管理が容易 | 記帳が簡単で手間が少ない |
デメリット | 記帳の手間が多い・ズレが発生しやすい | 在庫数をリアルタイムで把握できない |
⚠️ 継続記録法のデメリットと注意点
継続記録法は非常に便利ですが、完璧ではありません。
帳簿上の在庫はあくまで「推定残高」にすぎず、
記録漏れや入力ミス、破損・盗難などがあると、実際の在庫と一致しないことがあります。
そのため、たとえ継続記録法を採用していても、
定期的に実地棚卸(実際の数量確認)を行うことが重要 です。
🧮 具体的な記録イメージ
たとえば、文具店がノートを100冊仕入れ、1冊200円で販売した場合:
日付 | 取引内容 | 受入数 | 払出数 | 残高 |
---|---|---|---|---|
10/1 | 仕入 | 100 | – | 100 |
10/3 | 販売 | – | 30 | 70 |
10/5 | 追加仕入 | 50 | – | 120 |
10/7 | 販売 | – | 40 | 80 |
このように、仕入・販売の都度記録することで在庫が常に把握できる のが継続記録法の特徴です。
📚 まとめ:継続記録法は「在庫を見える化」する会計の基本
継続記録法は、
「在庫数・原価・損益をリアルタイムで把握したい」
という企業に最適な在庫管理方法です。
ただし、帳簿上の在庫はあくまで推定値であるため、
定期的な実地棚卸との併用 が欠かせません。
正確な在庫データを保つことで、
無駄な仕入れを防ぎ、原価をコントロールし、
結果的に企業の利益体質を強化することにつながります。
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