企業の財務分析で重要な指標の一つが「総資産回転率(総資本回転率)」です。
この記事では、総資産回転率の基本的な意味、計算方法、目安、業種別平均、改善方法まで初心者向けにわかりやすく解説します。
自社の経営効率をチェックする際の参考にしてください。
総資産回転率とは?
総資産回転率とは、会社が保有する総資産を使ってどれだけ効率的に売上を生み出しているかを示す指標です。
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総資産回転率が高い → 少ない資産で多くの売上を生み出している
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総資産回転率が低い → 資産の使い方に改善の余地がある
「回転」という言葉は、資産が現金から商品になり、販売され、再び現金に戻る1サイクルを意味します。
例えば現金100円を投資して商品を仕入れ、120円の売上を得て再び現金に戻した場合、これは「1回転」となります。
総資産回転率の計算方法
総資産回転率は次の式で求められます。
より正確に計算する場合は、総資産の期中平均を用いることもあります。
具体例
| 会社 | 売上高 | 総資産 | 総資産回転率 |
|---|---|---|---|
| 甲社 | 20万円 | 5万円 | 4回転 |
| 乙社 | 30万円 | 10万円 | 3回転 |
この例では甲社の方が総資産を効率的に運用していることがわかります。
売上規模が異なっても、総資産回転率を比較することで資産効率の良し悪しを把握できます。
総資産回転率と総資産回転期間の違い
似た指標に「総資産回転期間」があります。違いは次の通りです。
| 指標 | 意味 | 計算式 | 単位 |
|---|---|---|---|
| 総資産回転率 | 総資産が効率的に売上を生み出したか | 売上高 ÷ 総資産 | 回転 |
| 総資産回転期間 | 総資産が売上として回収されるまでの期間 | 総資産 ÷ 売上高 | 年・月・日 |
例:甲社の場合
日数や営業日ベースで計算することで、資産を回収するまでの期間をより直感的に理解できます。
総資産回転率の目安
一般的な目安は「1.0回転」です。
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1.0以上 → 資産を効率的に運用している
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1.0未満 → 資産の効率性が低い可能性あり
業種によって基準は異なります。小売業や卸売業では、仕入と販売のサイクルが短いため総資産回転率が高くなる傾向があります。
総資産回転率が低い場合の改善策
総資産回転率が低い原因は主に2つです。
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売上高が小さい場合
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販路拡大や営業方法の見直し、新商品開発などを検討。
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総資産が大きい場合(遊休資産や滞留在庫)
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在庫管理の改善、使用していない資産の整理を検討。
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また、投資目的で保有している資産は売上に直接結びつかないため、総資産回転率が低くなることがあります。
業種別総資産回転率の平均
| 業種 | 総資産回転率(回転) |
|---|---|
| 建設業 | 1.29 |
| 製造業 | 1.04 |
| 情報通信業 | 1.06 |
| 運輸・郵便業 | 1.17 |
| 卸売業 | 1.71 |
| 小売業 | 2.03 |
| 不動産・賃貸業 | 0.37 |
| 宿泊・飲食サービス業 | 1.46 |
※出典:「中小企業実態基本調査」(経済産業省)
業種特性に応じて、自社の数値を比較することが重要です。
総資産回転率と総資産利益率の関係
総資産回転率は総資産利益率(ROA)の分析にも役立ちます。
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売上高当期純利益率 → 売上に対してどれだけ利益が残るか
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総資産回転率 → 総資産を効率的に運用できているか
このように分解することで、資産の効率性と収益性を同時に把握できます。
まとめ
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総資産回転率は、総資産が効率的に売上を生み出しているかを示す重要な指標です。
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計算式は「総資産回転率 = 売上高 ÷ 総資産」。1.0回転以上が目安。
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業種によって回転率の平均値は異なるため、自社の数値は同業他社と比較するのがポイント。
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回転率が低い場合は、売上改善や遊休資産の整理などで効率化を図る。
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総資産利益率の分析にも役立ち、資産効率と収益性を同時にチェック可能。
総資産回転率を把握し、資産を効率的に運用することで、会社の経営改善や利益拡大につなげることができます。
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