企業の資金繰りや取引で頻繁に利用される「裏書手形」。
手形取引を正しく理解するうえで欠かせない重要な概念ですが、専門用語が多いため、初心者には少し難しく感じられるかもしれません。
この記事では、裏書手形の意味・仕組み・会計処理・注意点を、会計の専門家としてわかりやすく解説します。
検索されやすいキーワード(手形、裏書、裏書譲渡、会計処理、偶発債務 など)を自然に盛り込み、実務にも役立つ内容に仕上げています。
裏書手形とは?基本の意味をやさしく解説
裏書手形(うらがきてがた)とは、企業が保有する受取手形を第三者へ譲渡する際、その手形の裏面に譲渡人として署名・押印したものを指します。
裏書して譲渡された手形は「裏書譲渡手形」とも呼ばれます。
● 手形は自由に譲渡できる「債権」
約束手形・為替手形などの手形は、
・他の企業へ支払手段として使う
・期日より前に譲渡して資金繰りに活用する
といった使い方が可能です。
そのため、手形の所持者が必要に応じて別の取引相手に手形を回す場面は、実務上よくあります。
裏書が必要な理由:譲渡の証明と責任の明確化
受取手形を譲渡する際は、
・譲渡人の氏名
・住所
・押印
を手形の裏に記入する必要があります。これが「裏書」です。
裏書は下記の役割を持っています。
● ① 手形の所有権が誰に移ったかを証明
裏書がないと、譲渡の事実が証明できません。
● ② 裏書人が連帯して保証する「遡及義務」が発生
最も重要なのがこの点です。
手形が期日に決済されず「不渡り」になると、裏書人に支払い請求が遡ってくる仕組みになっています。
つまり、裏書した時点で保証人になるということです。
取引先から依頼されても、安易に裏書譲渡を行うと後々のリスクを抱える可能性があります。
裏書手形の会計処理:なぜ流動負債に計上するのか
裏書手形は、会計上 流動負債 に計上されます。
その理由は、裏書人に「偶発債務(将来発生するかもしれない債務)」が残るためです。
● 裏書手形が負債として扱われる理由
・裏書した時点で支払義務が残る
・不渡りが出た場合に裏書人へ請求が来る
・利益として確定しているわけではない
つまり、裏書手形は “売上” や “利益” として扱えるものではなく、あくまで負債の可能性を内包した状態として扱う必要があります。
裏書手形の具体例:どんな場面で使われるのか?
例として、以下のような流れが典型的です。
● ケース:受取手形を仕入先への支払いに使う場合
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A社はB社から商品を仕入れ、支払期日が到来
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A社はC社から受け取っていた約束手形を仕入先B社へ譲渡(裏書)
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B社が期日前に資金として活用することも可能
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手形が不渡りになった場合は、A社に支払い請求が戻ってくる
このように、裏書手形は企業間の支払・資金繰りをスムーズにする手段として用いられます。
裏書手形を利用する際の注意点
裏書手形には便利な面がある一方で、以下のようなリスクがあります。
● ① 不渡りリスク
振出人が倒産・資金難などで不渡りになると、裏書人に請求が戻る。
● ② 信用リスク
裏書した手形が不渡りになると、自社の信用問題につながる。
● ③ 手形管理の手間
裏書の記録、手形の保管、決済状況の確認など、手続きが増える。
そのため、実務では信用調査を行ったうえで裏書手形を利用することが重要です。
まとめ:裏書手形は便利だがリスクもある取引手段
裏書手形とは、受取手形を裏書して他社へ譲渡する取引であり、資金繰りを支援する便利な手段です。
一方で、裏書人には不渡り時の「遡及義務」が発生するため、実務では十分な注意が必要となります。
会計処理では流動負債に計上され、偶発債務としての性質を持つ点も重要です。
裏書手形を正しく理解することは、企業の資金管理・取引リスク管理に大きく役立ちます。
手形取引が多い業種の方は、ぜひこの機会に仕組みをしっかり押さえておきましょう。
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