契約にはさまざまな種類がありますが、その中でも「要物契約(ようぶつけいやく)」は、法律や金融の分野でよく登場する専門用語です。
一見むずかしそうに聞こえますが、日常生活にも身近な例がある契約形式です。本記事では、要物契約の意味や具体例、保険との関係についてわかりやすく解説します。
要物契約とは?
「要物契約」とは、当事者の意思表示の合致に加えて、目的物の引き渡しなど実際の給付が行われてはじめて成立する契約のことをいいます。
通常の契約(諾成契約)は、当事者の「合意」だけで成立しますが、要物契約はそれだけでは成立せず、「物の引き渡し」などの現実的な行為が必要です。
要物契約の具体例
要物契約の典型例には、次のようなものがあります。
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消費貸借契約(お金の貸し借り)
友人から「1万円貸して」と頼み、相手が「いいよ」と言っても、その場でお金を渡されなければ契約は成立しません。実際にお金を受け取ってはじめて契約が成立する、これが要物契約です。 -
使用貸借契約(ものを借りる)
「この本を貸して」と頼み、相手が了承しても、実際に本を受け取らない限り契約は成立しません。
このように、合意+給付=契約成立 という点が特徴です。
諾成契約との違い
要物契約を理解するためには、「諾成契約」との違いを知るとスッキリします。
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諾成契約:当事者の合意だけで成立する契約
例)売買契約(「この商品を1万円で買います」「売ります」で成立) -
要物契約:合意に加え、目的物の引き渡しがあって成立する契約
例)消費貸借契約(お金を受け取って成立)
👉 ポイントは、「合意だけで成立するか」「実際の受け渡しが必要か」という点です。
要物契約と保険との関係
保険契約は、実は要物契約ではなく諾成契約です。
つまり、保険会社と契約者が「この条件で契約します」と合意すれば成立します。保険料の支払いが完了していなくても、合意があれば契約は有効になるのです。
ただし、保険料を支払わないまま放置すると契約が失効するなどの制限があるため、契約が成立する仕組みと維持するための条件は区別して考える必要があります。
まとめ
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要物契約とは:合意だけでなく、物の引き渡しなどがあって成立する契約
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具体例:消費貸借契約(お金の貸し借り)、使用貸借契約(ものの貸し借り)
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諾成契約との違い:諾成契約は合意だけで成立、要物契約は引き渡しが必要
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保険契約は要物契約ではない:保険は合意で成立する諾成契約
法律や契約の仕組みを学ぶとき、要物契約と諾成契約の違いを理解しておくとスムーズです。特に金融・保険の分野では「どの時点で契約が成立するのか」が重要になるため、ぜひ覚えておきましょう。
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