販売費及び一般管理費(販管費)とは

販売費及び一般管理費(販管費)とは?内訳・仕訳・削減策を徹底ガイド

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会社を経営・運営するうえで「販管費(販売費及び一般管理費)」は非常に重要なコスト項目です。
しかし、「販管費って具体的に何?」「どこまで含めていいの?」「どうやって抑えればいいの?」という疑問をお持ちの方も多いでしょう。

この記事では、会計・税務の実務経験者として、販管費の定義・具体的な勘定科目・決算書での表記・分析方法・削減方法を初心者にもわかるように解説します。

目次

  1. 販売費及び一般管理費(販管費)とは

  2. 販売費 vs 一般管理費:違いと分類意義

  3. 勘定科目/内訳一覧

  4. 販管費の仕訳例

  5. 決算書(損益計算書)での表示位置

  6. 分析指標:販売費比率・販管費率

  7. 削減施策:実践的な方法

  8. 注意点・税務上の論点

  9. まとめ

 

1. 販売費及び一般管理費(販管費)とは

販売費及び一般管理費(販管費)とは、会社が本業を行ううえで必要な費用のうち、売上原価に含まれないコストで、

  • 商品・サービスを売るための費用(販売費)

  • 会社全体の運営・管理にかかる費用(一般管理費)

を合わせた総称です。

たとえば、広告宣伝費、水道光熱費、事務所の家賃、人件費(事務部門分)などが含まれます。
売上総利益(=売上高 − 売上原価)から販管費を引くと、営業利益が出ます。

2. 販売費と一般管理費:違いと分類の意義

なぜ販売費と一般管理費を区別するのか?それは、コスト構造・経営の可視化のためです。
分類すると、どこで費用が使われているか、変動費なのか固定費なのか、無駄があるかどうかが見えやすくなります。

区分 性質 変動性
販売費 営業・販売活動に直接関連 変動性が高い 広告費、販売手数料、発送費、接待交際費 など
一般管理費 管理業務・バックオフィス活動 比較的固定的 事務所家賃、通信費、減価償却費、役員報酬 など

ただし、すべてが明確に分類できるわけではなく、実務上「按分(あんぶん)」処理をすることもあります。

3. 勘定科目/内訳一覧

以下は、販売費・一般管理費に含まれる代表的な勘定科目とその内容例です。

販売費の主な勘定科目例

勘定科目 内容例
広告宣伝費 チラシ・ネット広告掲載費など
販売手数料 代理店への手数料、外注販売手数料など
荷造運賃 梱包・送料・発送コストなど
販売促進費 サンプル配布、キャンペーン費用など
接待交際費 取引先との食事代、イベント会費など
旅費交通費 営業活動での交通費や出張費など

一般管理費の主な勘定科目例

勘定科目 内容例
役員報酬 取締役・監査役報酬など
給与賃金 事務部門の給与・賞与等
法定福利費 健康保険・厚生年金の会社負担分など
福利厚生費 健康診断・慶弔費など
修繕費 建物・設備の維持修繕費
外注工賃 デザイン・システム外注費など
水道光熱費 事務所の電気・ガス・水道代など
地代家賃 事務所・倉庫の賃料など
消耗品費 事務用品・消耗品代など
通信費 電話・インターネット利用料など
租税公課 印紙代・事業税・固定資産税等(営業外税金を除く)
保険料 事業用資産にかかる保険など
車両費 車両維持費・ガソリン代など
リース料 コピー機などリース費用
新聞図書費 業務関連書籍・新聞代など
諸会費 組合費・商工会費など
支払手数料 銀行振込・専門家報酬など
減価償却費 固定資産の償却費用(該当分)

注記:

  • 製造業などでは、製造部門に関わる人件費や経費は「売上原価」に分類されることがあります。

  • 事業の性質や業界によって含まれる科目は異なるので、業種特性を考慮する必要があります。

 

4. 販管費の仕訳例

実際の仕訳でイメージを持ちましょう。

例 1:広告費を支払ったとき(即時支払)

(借方)広告宣伝費 100,000円 /(貸方)普通預金 100,000円

このとき、広告宣伝費は販売費の勘定科目です。

例 2:家賃を未払で計上する月末仕訳

(借方)地代家賃 200,000円 /(貸方)未払金 200,000円

この「地代家賃」は一般管理費に該当することが一般的です。

例 3:減価償却費を当期分計上

(借方)減価償却費 150,000円 /(貸方)減価償却累計額 150,000円

減価償却費は、該当資産の用途に応じて販管費か売上原価に振り分けます。

5. 決算書(損益計算書)での表示位置

販管費は損益計算書において、売上総利益の直下、営業利益を求めるための控除項目となります。

売上高
- 売上原価
= 売上総利益
- 販売費及び一般管理費
= 営業利益

損益計算書では、販管費の内訳を別紙で補足することもあります。

6. 分析指標:販売費比率・販管費率

販管費を単なるコストとしてだけ見るのではなく、効率性を測る指標として活用します。

販売費比率(販売費のみ対象)

販売費比率 = (販売費 ÷ 売上高) × 100

販管費率(販売費+一般管理費を対象)

販管費率 = (販売費及び一般管理費 ÷ 売上高) × 100

  • 販売費:100万円

  • 一般管理費:200万円

  • 売上高:1,000万円

→ 販管費率 = (100 + 200) ÷ 1,000 × 100 = 30%

分析のポイント

  • 時系列比較:年度ごとに比率推移を追って、販管費が増加傾向かどうかを確認

  • 業界平均との比較:同業他社と比較して、過剰支出がないか評価

  • 内訳分析:どの勘定科目(広告、給与、通信費など)が比率を押し上げているかを把握

こうした分析から、効率改善やコスト最適化の課題が見えてきます。

7. 販管費を削減するには?実践的なアプローチ

以下は、実務でよく使われる販管費削減アイデアです。

  1. 役員報酬の見直し
     報酬が過大でないか、適正水準かを検討。ただし、法人税法上、役員報酬の変更にはルール(定期同額給与など)がありますので注意。

  2. 人件費の効率化/業務改善
     作業フローを見直す、システム導入による自動化、省力化を図る。残業管理や業務分担の最適化も有効。

  3. オフィスや拠点の見直し
     賃貸事務所が過剰であれば縮小や移転、あるいはテレワーク導入で使用面積を抑える。

  4. 広告宣伝費の精査
     広告の成果を追跡して、費用対効果の低い手法を削除。ターゲティング広告やデジタル広告など、効率性を意識。

  5. 旅費交通費の管理強化
     出張規程を整備、事前承認制度を導入、Web会議化を推進するなどの対策。

  6. 支払条件・契約見直し
     リース料、保守契約、外注費、各種サブスクリプション費用などを定期的に見直す。

これらは、ただ削るだけでなく、業務への影響を見ながら段階的に改善していくことが肝要です。

8. 注意点・税務上の論点

販管費を扱う際には、以下のような注意点や税務上の制約が存在します:

  • 役員報酬の「定期同額給与」のルール:原則として定時株主総会で決定した額しか損金算入できない

  • 交際費の損金不算入限度額:交際費には法人税法上の損金不算入規制がある

  • 按分処理の妥当性:共通費(光熱費、通信費など)を販管費と売上原価に按分する場合、合理的な基準が要求される

  • 費用化タイミング:発生主義原則に則り、発生した時期に適切に費用計上すること

  • 業種特性の考慮:製造業・サービス業・小売業などで、販管費に含める費用の性格が異なる

これらを見落とすと、税務調査で指摘を受けたり、利益の計算が歪む可能性があります。

9. まとめ:販管費の最適化が企業の成長を支える

販管費は、会社の本業の収益性を左右する重要なコストです。
ただ単に「経費だから支払う」のではなく、何に使われているか・効果はあるか・無駄はないかを定期的に見直すことが、強い経営基盤を作る鍵となります。

本記事でご紹介した内容をもとに、自社の販管費を分析し、改善できるポイントをぜひ洗い出してみてください。

さらに参照してください:

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