現金・預金とは

貸借対照表の「現金・預金」とは?見るべきポイントをわかりやすく解説!

企業の財務状況を把握するうえで欠かせないのが「貸借対照表(バランスシート)」です。その中でも最も注目すべき科目の一つが「現金・預金」。
経営の安定性や資金繰りの健全性を判断するために、現金・預金をどう見るかは非常に重要です。

本記事では、公認会計士としての実務経験を踏まえ、「貸借対照表の現金・預金を見るときのポイント」を初心者にもわかりやすく解説します。

現金・預金とは?

「現金・預金」とは、企業が保有する現金と、銀行などの金融機関に預け入れているお金の総称です。
貸借対照表では、決算日(期末日)時点での現金と預金の合計額を示します。表示名は「現金及び預金」「現金預金」と記載される場合もありますが、いずれも同じ意味です。

現金に含まれるもの

会計上の「現金」は、単に紙幣や硬貨に限りません。すぐに換金できる性質を持つものも含まれます。
例えば次のようなものです:

  • 他人振出の小切手

  • 郵便為替証書

  • 配当金領収証

  • 期限到来済の利札

いずれも、すぐに金融機関で現金化できるため「現金」として扱われます。

預金に含まれるもの

「預金」は、金融機関に預け入れたお金です。主な種類は以下の通りです。

  • 当座預金:小切手の振出しなど企業間取引で多く利用。利息は付きませんが元本保証があります。

  • 普通預金・通知預金:いつでも引き出しが可能。利便性が高く日常の資金管理に利用されます。

  • 定期預金:満期まで引き出しができない預金。1年を超える場合は「長期性預金」として別区分に計上します。

 

貸借対照表上の位置

「現金及び預金」は、貸借対照表の流動資産の最上段に表示されます。
これは、資産を「換金しやすい順(流動性の高い順)」に並べる会計ルールがあるためです。

流動資産の部は通常、以下のような順で表示されます:

現金及び預金 → 受取手形 → 売掛金 → 棚卸資産 …

現金・預金は、受取手形や売掛金よりも即時換金が可能なため、最も流動性が高い資産として扱われます。

現金・預金を見る際のチェックポイント

① 現金・預金は「十分な額」があるか?

企業にとって現金・預金は“資金繰りの生命線”です。
急な支払いや売掛金の未回収など、予期せぬ事態に備えるためにも、一定の現金・預金を確保しておく必要があります。

たとえば:

  • 仕入代金の支払い

  • 給与やボーナスの支給

  • 税金の納付
    などは、現金・預金が不足していると即座に経営に影響します。

② 売上が好調なのに現金・預金が増えない理由

「売上が伸びているのに、現金・預金が増えていない」ケースもよくあります。
これは、売上が掛け取引(後払い)で発生しているためです。
つまり、売上計上時点では現金を受け取っておらず、「売掛金」として計上されています。

このような場合は、以下を確認してみましょう:

  • 売掛金や受取手形が増えていないか?

  • 回収サイト(入金までの期間)が長くなっていないか?

資金回転の効率を示す指標「CCC(キャッシュ・コンバージョン・サイクル)」を見るのも有効です。
CCC = 売上債権回転期間 + 棚卸資産回転期間 − 仕入債務回転期間
→ この期間が長いほど、資金の回収効率が悪化していることを意味します。

③ 「黒字倒産」を防ぐための視点

会計上は利益が出ていても、現金・預金が不足していれば支払いができず、倒産してしまうことがあります。
これがいわゆる「黒字倒産」です。
売上だけでなく、現金の動き=資金繰りにも注目することが、健全な経営のカギとなります。

貸借対照表だけでは見えない現金の流れ

貸借対照表で確認できるのは「決算日時点の残高」のみです。
つまり、会計期間中の入出金の動きまでは把握できません。

現金の流れ(キャッシュフロー)を分析するには、以下の帳票も併せて確認する必要があります。

  • 現金出納帳・預金出納帳

  • キャッシュフロー計算書(CF計算書)

これらを合わせて分析することで、「どこから現金を得て、どこに使ったのか」が見えてきます。

まとめ:現金・預金は会社の健康診断の“血液”のようなもの

「現金・預金」は、企業の資金繰りを支える最も重要な資産の一つです。
貸借対照表を見るときは、単に金額の大小を見るだけでなく、

  • 他の資産とのバランス

  • 売掛金・手形との関係

  • キャッシュフローの動き
    といった点をあわせて確認することが大切です。

さらに参照してください:

減資差益とは?わかりやすく解説