会社の決算や財務諸表を作成する際に、「賞与引当金」という言葉を耳にすることがあります。
初めて聞く方には少し難しい印象ですが、翌期に支払う賞与の準備として、前期に費用を計上するための重要な勘定科目です。
この記事では、賞与引当金の意味や会計処理方法、仕訳例、税務上の取り扱いをわかりやすく解説します。
賞与引当金とは?
賞与引当金とは、将来支払う賞与に備えて、前期に計算・準備しておく費用のことです。
引当金とは、将来発生が予想される費用や損失に対して、あらかじめ計上しておく会計処理のことを指します。
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賞与引当金を計上することで、当期の損益を適正に計算できる
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投資家や関係者に対して、将来の負担を明確に提示できる
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会社にとって、従業員への賞与支払いを確実にする準備になる
特に労働契約で賞与支給が定められている場合には、会計上、前期に計算しておく必要があります。
賞与引当金の具体的な仕訳例
賞与引当金は、損益計算書と貸借対照表の両方に影響します。
賞与引当金繰入額の計算例
たとえば、翌期7月に支給予定の賞与(支給対象期間1~6月)が1,200,000円で、決算が3月の場合:
この600,000円が、当期に対応する賞与引当金の繰入額です。
賞与引当金繰入の仕訳
借方:賞与引当金繰入額 600,000円
貸方:賞与引当金 600,000円
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「賞与引当金繰入額」は損益計算書の費用
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「賞与引当金」は貸借対照表の負債として計上されます
賞与引当金戻入の仕訳
翌期に賞与を支給する際、賞与引当金を消去する必要があります。
例1:支給額が見積通りの場合
借方:賞与引当金 600,000円
借方:賞与 600,000円
貸方:現金預金 1,200,000円
例2:支給額が見積より多い場合(150万円支給)
借方:賞与引当金 600,000円
借方:賞与 900,000円
貸方:現金預金 1,500,000円
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前期に計上した賞与引当金は借方で解消
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支給額の残りは「賞与」として費用計上
賞与引当金の税務上の取り扱い
会計上は必要な費用ですが、税務上は損金として認められません。
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会計上の「費用」=税務上の「損金」とは必ずしも一致しない
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賞与引当金繰入額は将来見積りのため損金不算入
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実際に賞与を支給した時点で損金として計上
過去には税務上も損金算入が認められていましたが、平成10年を境に廃止されました。
会計処理のポイント
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賞与引当金は、将来支給予定の賞与に対応する費用を前もって計上
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「賞与引当金繰入」と「賞与引当金の戻入」の仕訳を正しく理解する
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会計上と税務上で扱いが異なるため、混同しないことが重要
まとめ
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賞与引当金とは、翌期に支払う賞与の費用を前期に計上する勘定科目
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仕訳例を理解することで、損益計算書と貸借対照表を正しく作成できる
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税務上は損金不算入のため、実際の支給時に費用計上
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適切な会計処理により、会社の財務状況や将来負担を正確に把握可能
賞与引当金の仕組みを理解しておくことで、決算書の読み解きや経営判断がスムーズになります。
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