プロト・ダンクシャーディングとは?
プロト・ダンクシャーディング(Proto-Danksharding)とは、Ethereumのスケーラビリティを向上させるための暫定的な技術です。
将来導入される本格的な「ダンクシャーディング」の前段階として設計されており、ネットワークの処理能力向上とトランザクションコスト削減を目的としています。
この仕組みは、Ethereumの開発者であるProtolambda氏とDankrad Feist氏によって提案されました。名前の「ダンク」は、開発者の名前に由来しています。
プロト・ダンクシャーディングは、Ethereumの大型アップグレードである「Cancun-Deneb(カンクン・デネブ)」の重要な要素であり、特にEIP-4844(Ethereum Improvement Proposal 4844)で導入されました。
このアップグレードにより、Ethereumのネットワークはより効率的にデータを処理できるようになり、将来的なスケーリング技術の土台が整備されます。
なぜプロト・ダンクシャーディングが必要なのか
Ethereumは世界で最も利用されているブロックチェーンの一つですが、利用者が増えるにつれて次のような課題が生まれていました。
・トランザクション手数料(ガス代)が高騰する
・ネットワークの処理能力に限界がある
・レイヤー2のデータコストが高い
特に、ロールアップと呼ばれるレイヤー2ソリューションでは、取引データをEthereumに保存する必要があるため、データ保存コストが大きな負担になっていました。
プロト・ダンクシャーディングは、この「データ保存コスト」を大幅に削減することを目的として導入された仕組みです。
Blob-carryingトランザクションの仕組み
プロト・ダンクシャーディングの中核となるのが「Blob-carryingトランザクション」です。
これは簡単に言うと、ブロックチェーン上に保存するデータの扱い方を効率化する新しいトランザクション形式です。
Blobとは「Binary Large Object(バイナリー・ラージ・オブジェクト)」の略で、大容量データを格納できる仕組みを指します。
Blob-carryingトランザクションでは、約125KB程度のデータをBlobとして扱うことができます。
従来のEthereumでは、トランザクションデータは「calldata」としてブロックチェーン上に永久保存されていました。
しかしこの方法はコストが高く、データ量が増えるほどガス代が高騰する原因になっていました。
一方、Blobは次のような特徴を持っています。
・Ethereum仮想マシン(EVM)に永久保存されない
・コンセンサスレイヤーで一時的に保存される
・データ保存コストが大幅に低い
この仕組みにより、ロールアップがEthereumに送るデータのコストが大幅に削減されると期待されています。
KZG多項式コミットメントとは
プロト・ダンクシャーディングでは、「KZG多項式コミットメント」という暗号技術も採用されています。
KZG(Kate・Zaverucha・Goldberg)コミットメントは、データ全体を公開しなくても、その内容が正しいことを検証できる暗号技術です。
この仕組みによって次のことが可能になります。
・Blobデータの整合性を効率的に検証
・データの改ざん防止
・検証処理の高速化
つまり、ネットワークの安全性を保ちながら、大量データを効率よく扱えるようになるというメリットがあります。
ロールアップへのメリット
プロト・ダンクシャーディングは、特にレイヤー2のロールアップ技術に大きなメリットをもたらします。
ロールアップとは、ブロックチェーンの外側で取引をまとめて処理し、その結果だけをEthereumに記録することで、ネットワークの負荷を減らすスケーリング技術です。
代表的なロールアップには次のようなものがあります。
・Optimistic Rollup
・ZK Rollup
これらのロールアップは、取引データをEthereumに送信する必要がありますが、Blobの導入によりそのコストが大幅に低下します。
その結果として、
・レイヤー2のガス代が安くなる
・取引処理の効率が向上する
・より多くのユーザーが利用しやすくなる
といった効果が期待されています。
プロト・ダンクシャーディングとダンクシャーディングの違い
プロト・ダンクシャーディングは、最終目標である「ダンクシャーディング」の簡易版ともいえる存在です。
将来的なダンクシャーディングでは、ネットワークのデータ処理を複数のシャードに分散することで、Ethereumの処理能力を大幅に拡張することが計画されています。
しかし、この完全な仕組みを一度に導入するのは技術的に複雑なため、まずはプロト・ダンクシャーディングを導入し、段階的にスケーリング技術を発展させていく方針が取られています。
プロト・ダンクシャーディングの注意点
プロト・ダンクシャーディングは革新的な技術ですが、いくつか理解しておきたいポイントもあります。
まず、この仕組みはあくまで暫定的なスケーリングソリューションであり、最終形ではありません。
将来的には完全なダンクシャーディングへと発展していく予定です。
また、Blobデータは永久保存されないため、長期的なデータ保存用途には向いていません。
主にロールアップのデータ公開用途として設計されています。
このように、用途が限定されている点も理解しておくことが重要です。
まとめ
プロト・ダンクシャーディングとは、Ethereumのスケーラビリティ問題を改善するために導入された新しい技術で、将来的なダンクシャーディングへの橋渡しとなる仕組みです。
特にBlob-carryingトランザクションの導入により、レイヤー2ロールアップのデータコストが大幅に削減され、Ethereumエコシステム全体の効率向上が期待されています。
この技術は、Ethereumの大型アップグレードであるCancun-Deneb(EIP-4844)の中心的な要素でもあり、ブロックチェーンのスケーリング技術における重要なステップといえるでしょう。
今後、完全なダンクシャーディングが実装されれば、Ethereumの処理能力はさらに向上し、より多くのユーザーやアプリケーションを支えるインフラとして発展していく可能性があります。
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