企業の「収益力」を測る指標はいくつもありますが、その中でも売上高経常利益率は、会社の“本来の稼ぐ力”を示す重要な数値です。
この記事では、売上高経常利益率の意味・計算方法・業種別の平均値・改善方法まで、初心者にもわかりやすく解説します。
💡 売上高経常利益率とは?
売上高経常利益率(うりあげだかけいじょうりえきりつ)とは、企業の売上高に対して「どれだけの経常利益を得ているか」を示す指標です。
計算式:
売上高経常利益率(%)= 経常利益 ÷ 売上高 × 100
つまり、売上が1,000万円あって経常利益が100万円なら、売上高経常利益率は10%ということになります。
この指標は、本業の営業活動に加え、利息や配当などの財務活動も含めた「企業全体の収益力」を測るのに役立ちます。
📊 経常利益とは?営業利益との違い
「経常利益」と「営業利益」は似ていますが、次のような違いがあります。
利益の種類 | 含まれる内容 | 主な特徴 |
---|---|---|
営業利益 | 売上総利益 − 販売費及び一般管理費 | 本業のもうけを示す |
経常利益 | 営業利益 + 営業外収益 − 営業外費用 | 財務活動も含む総合的なもうけ |
たとえば、借入金の利息(営業外費用)や受取配当金(営業外収益)も経常利益に含まれます。
したがって、経常利益率は「企業全体の安定的な収益力」を見るのに適しているのです。
📈 売上高経常利益率の業種別目安
業種によって利益率の水準は異なります。
以下は中小企業庁の「中小企業実態基本調査(令和2年度)」を基にした業種別の平均的な売上高経常利益率です。
業種 | 売上高経常利益率(平均) |
---|---|
建設業 | 5.1% |
製造業 | 4.1% |
情報通信業 | 6.0% |
運輸・郵便業 | 1.3% |
卸売業 | 1.9% |
小売業 | 2.7% |
不動産業 | 9.6% |
学術・専門サービス業 | 12.1% |
宿泊・飲食業 | 2.2% |
🔍 参考:中小企業庁「中小企業実態基本調査(令和2年度決算実績)」
特に利益率が高いのは専門サービス業・不動産業で、反対に運輸業や飲食業は競争が激しく、利益率が低くなりがちです。
🧮 売上高経常利益率の計算方法(具体例つき)
たとえば、ある企業の損益計算書が以下の通りだったとします。
-
売上高:2億円
-
売上原価:1億2,000万円
-
販売費及び一般管理費:6,000万円
-
営業外収益(受取配当金など):100万円
-
営業外費用(支払利息など):50万円
この場合の経常利益は:
経常利益 = 2億 − 1億2,000万 − 6,000万 + 100万 − 50万
= 50万円
したがって、売上高経常利益率は:
50万円 ÷ 2億 × 100 = 2.5%
この企業の「売上高経常利益率」は2.5%であり、業界平均並みの収益性といえます。
🚀 売上高経常利益率を上げる5つの方法
売上高経常利益率は、以下のような施策で改善することができます。
① 売上高を増やす
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新規顧客の獲得
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既存顧客へのアップセル・クロスセル
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値引き依存の販売からの脱却
② 売上原価を下げる
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原材料や仕入先の見直し
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在庫の適正化によるロス削減
③ 販売費・一般管理費を削減
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広告宣伝費のROI分析
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オフィス家賃や人件費の最適化
④ 営業外収益を増やす
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遊休不動産の貸出による賃貸収入
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他社株式への投資で配当金を得る
⑤ 営業外費用を減らす
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借入金の返済を進めて支払利息を削減
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無駄なリース契約や不要な保険の見直し
こうした改善を積み重ねることで、本業+財務面の両方から利益率を底上げできます。
💬 売上高経常利益率の活用ポイント
売上高経常利益率は、単年度だけでなく複数年度で比較することが重要です。
たとえば、前年よりも上昇していれば経営効率が改善している証拠。
逆に低下している場合は、営業外費用(借入利息など)が増えていないか確認しましょう。
また、競合他社や業界平均との比較を行うことで、自社の立ち位置を客観的に把握できます。
🏁 まとめ:売上高経常利益率で「企業の安定的な収益力」を把握しよう
ポイント | 内容 |
---|---|
指標の意味 | 売上高に対する経常利益の割合 |
計算式 | 経常利益 ÷ 売上高 × 100 |
重要性 | 本業+財務活動を含めた総合収益力を測定 |
業種別目安 | 多くの業種で1~5%前後 |
改善策 | 売上拡大・原価削減・財務改善など |
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