「級数法(きゅうすうほう)」とは、減価償却費を算出する際に用いられる計算法の一つです。
算術級数(等差数列)の考え方を利用して、毎年の償却額を一定の割合で逓減(ていげん)させながら計上していくのが特徴です。
難しそうに聞こえますが、ポイントを押さえれば、減価償却の概算値を簡便に求めることができる便利な方法です。
この記事では、級数法の意味から計算の仕組み、他の方法との違いまで、やさしく解説します。
減価償却における「級数法」とは?
企業や個人事業主は、固定資産(建物・機械・車両など)を購入した際、その資産価値を耐用年数に応じて少しずつ費用化していきます。これが「減価償却」です。
このとき、どのように費用(減価償却費)を配分するかを決めるのが「減価償却の計算法」です。
代表的な方法には次のようなものがあります:
-
定額法:毎年同じ金額を償却する
-
定率法:毎年残高に一定率を掛けて償却する
-
級数法:算術級数的に金額を逓減させて償却する
このうち、級数法は償却額を毎年一定の金額ずつ減らしていくため、初年度に最も多く、年数が進むにつれて少なくなっていく形になります。
級数法の計算方法(基本的な仕組み)
級数法では、まず要償却額(取得原価 − 残存価額)を求めます。
次に、耐用年数をもとにして算術級数(1+2+3+…+n)を使い、各年の償却割合を計算します。
たとえば、耐用年数が5年の場合、級数の合計は以下の通りです。
この15を基準にして、各年の償却額を配分します。
年度 | 償却比率 | 償却額(例) |
---|---|---|
1年目 | 5/15 | 要償却額 × 5/15 |
2年目 | 4/15 | 要償却額 × 4/15 |
3年目 | 3/15 | 要償却額 × 3/15 |
4年目 | 2/15 | 要償却額 × 2/15 |
5年目 | 1/15 | 要償却額 × 1/15 |
このように、年を追うごとに償却額がなだらかに減少していくのが特徴です。
級数法と定率法の違い
項目 | 級数法 | 定率法 |
---|---|---|
計算の基準 | 算術級数 | 資産の帳簿価額(残高) |
償却パターン | 年々一定額ずつ減少 | 年々一定率で減少 |
初期償却の大きさ | やや緩やか | 大きい(初年度に多く償却) |
資本回収の速度 | 遅い(保守的) | 速い |
法人税法での扱い | 認められていない | 認められている |
級数法は、減価償却額の変化が穏やかであり、会計上「保守的」な方法とされています。
一方で、資本回収のスピードが遅くなるというデメリットもあります。
級数法は会計上は認められるが、税務上は認められない
重要な点として、法人税法では級数法による償却は認められていません。
つまり、税務申告の際には使用できないということです。
しかし、企業会計原則では認められているため、
「社内の財務分析」や「概算的な減価償却費の試算」などには活用できます。
級数法のメリット・デメリットまとめ
メリット | デメリット |
---|---|
・計算が比較的簡単で理解しやすい | ・法人税法上は使えない |
・償却額の変動がなだらかで安定 | ・資本回収に時間がかかる |
・概算計算に適している | ・実務では使用機会が限られる |
まとめ:級数法は「簡便な概算方法」として知っておく価値あり
級数法は、定率法ほど急激に償却せず、安定した償却費を計上したいときに有効な考え方です。
実務上は税務処理には使えませんが、企業会計上の分析やシミュレーションでは役立ちます。
減価償却を理解するう
さらに参照してください: