経過勘定科目は、会計処理の中でもよく登場する重要な考え方の一つです。決算時や月次処理の際に、現金の動きと実際の費用・収益の発生時期がずれることがあります。そのズレを正しく調整するために使われるのが「経過勘定科目」です。
この記事では、公認会計士の立場から、経過勘定科目の意味や種類、具体的な仕訳例、そして未決済項目との違いをわかりやすく解説します。初めて経理を担当する方や、仕訳の正確さを高めたい方に役立つ内容です。
経過勘定とは
経過勘定とは、収益や費用をその発生した期間に正しく対応させるための会計処理のことをいいます。
現金の支払いや受け取りのタイミングと、経済的な実態としての「費用の発生」「収益の獲得」の時期が一致しない場合に、そのズレを調整するために用います。
たとえば、毎月10万円の家賃費用が発生しているが、支払いは年1回、1年分の120万円を翌年に支払う場合、実際には毎月費用が発生しているのに、現金は動いていません。このようなケースでは「未払費用」を使って、毎月の費用を正しく認識します。
主な経過勘定科目
経過勘定科目は大きく4つに分類されます。
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未払費用
すでにサービスの提供を受けているにもかかわらず、まだ代金を支払っていない場合に使います。
例:通信費や家賃、水道光熱費などを後払いにしているケース。 -
未収収益
すでにサービスを提供しているのに、まだ代金を受け取っていない場合に使います。
例:貸付利息や賃貸料などの後受け。 -
前払費用
サービスの提供前に支払いを済ませている場合に使います。
例:保険料や家賃を先払いしているケース。 -
前受収益
サービスを提供する前に代金を受け取っている場合に使います。
例:家賃を前払いで受け取った場合など。
経過勘定科目の仕訳例
具体的な仕訳を見てみましょう。
【未払費用の例】
毎月10万円の家賃が発生しており、1年分120万円を翌年にまとめて支払う場合。
毎月の仕訳
借方:地代家賃 100,000円
貸方:未払費用 100,000円
支払い時の仕訳
借方:未払費用 1,200,000円
貸方:普通預金 1,200,000円
同様に、未収収益・前払費用・前受収益でも、発生時期と入出金時期を対応させて処理します。これにより、各会計期間の損益を正確に把握することができます。
未決済項目との違い
経過勘定と混同されやすいのが「未決済項目」です。未決済項目とは、代金の支払いや受け取りがまだ終わっていない取引を指します。
経過勘定は、継続的なサービスの提供や利用に関するタイミングのズレを調整するためのもので、代表的な科目が「未払費用」「未収収益」などです。
一方、未決済項目は、サービス提供とは関係なく一度きりの取引で発生します。代表的な科目は「未払金」「未収金」「前払金」「前受金」です。
例えば、備品を購入して代金を後日支払う場合は「未払金」で処理します。これは経過勘定ではなく、単純に代金の決済が未完了の取引だからです。
経過勘定科目を使う目的と重要性
経過勘定科目の目的は、期間損益を正確に計算することです。
現金主義ではなく発生主義で会計を行うことにより、その期間の実態に即した利益や費用を算出できます。これは、企業の業績分析や税務計算において極めて重要です。
経過勘定を正しく処理することで、
・利益の過大・過少計上を防ぐ
・税金計算を正確に行う
・経営判断の精度を高める
といった効果があります。
まとめ
経過勘定科目とは、現金の動きと収益・費用の発生時期のズレを調整するための勘定科目です。
未払費用、未収収益、前払費用、前受収益の4つを正しく使い分けることで、会計期間ごとの損益を正確に算定できます。
「支払った時」「受け取った時」ではなく、「いつサービスを提供・受けたのか」を意識することがポイントです。これを理解すれば、決算書の信頼性が高まり、正しい経営判断につながります。
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