企業会計原則とは

企業会計原則とは 基礎となる7つの一般原則と会計公準の解説

企業会計原則とは、企業が会計処理を行う際に守るべき基本的なルールです。財務諸表の作成や監査の際に基準として用いられ、公正で適切な会計処理を実現するために存在しています。この記事では、企業会計原則の基礎となる7つの一般原則や会計公準について、初心者でも理解しやすい形で解説します。

企業会計原則とは

企業会計原則は、1949年に旧大蔵省の経済安定本部・企業会計制度対策調査会によって公表されました。企業会計の慣習から生まれ、一般に公正妥当と認められる基準をまとめたもので、法的拘束力はありません。しかし、大企業・中小企業を問わず、会計処理の基本として今日まで重要視されています。会計監査でも従うべき原則とされています。

2001年以降は企業会計基準の重視が高まり、2008年以降のG20サミット以降は国際会計基準との整合性も重視されるようになりました。それでも企業会計原則は、会計処理の基本を理解するうえで欠かせない知識です。

企業会計原則は、「一般原則」「損益計算書原則」「貸借対照表原則」、および重要性の原則などをまとめた「企業会計原則注解」から構成されています。

一般原則は7つの原則から成り立つ

企業会計原則の中でも最高規範とされるのが一般原則です。損益計算書原則や貸借対照表原則よりも幅広く、企業の会計処理全体に共通する考え方を示しています。一般原則は以下の7つです。

  1. 真実性の原則

  2. 正規の簿記の原則

  3. 資本取引・損益取引区分の原則

  4. 明瞭性の原則

  5. 継続性の原則

  6. 保守主義の原則

  7. 単一性の原則

1. 真実性の原則

真実性の原則は、企業の財政状態や経営成績を正確に報告することを求めるものです。不正や不当な利益操作がない、相対的に適切な決算書の作成が求められます。例えば固定資産の減価償却方法を定額法・定率法のどちらにするかは企業が選択できますが、会計基準に沿った方法であれば真実性の原則に適合します。

2. 正規の簿記の原則

正規の簿記の原則は、すべての取引について網羅性・検証可能性・秩序性を備えた帳簿を作成することを求めます。実務では複式簿記による記録がこれに該当します。

3. 資本取引・損益取引区分の原則

資本取引と損益取引を明確に区分することが求められます。資本剰余金と利益剰余金を混同せず、投下資本と利益を明確に区別することで、利害関係者に正しい情報を提供できます。

4. 明瞭性の原則

明瞭性の原則では、財務諸表によって利害関係者が誤った判断をしないように、情報をわかりやすく表示することが求められます。重要な会計方針や後発事象の注記もこの原則に基づきます。

5. 継続性の原則

継続性の原則は、一度採用した会計方針を原則として毎期継続して適用することを求めます。これにより、期間比較が容易になり、利益操作を防ぐことができます。

6. 保守主義の原則

保守主義の原則では、財政に不利な影響がある場合には慎重に会計処理を行います。収益は遅めに、費用は早めに計上することで、過度な利益操作を防ぎます。

7. 単一性の原則

単一性の原則は、異なる目的の財務諸表を作成する場合でも、もとになる会計記録は1つであるべきと定めています。事実の表示を目的に応じてゆがめてはいけません。

企業会計原則を守らないとどうなるか

企業会計原則は法的拘束力を持たないものの、会社法や金融商品取引法などの関連法規と関わります。原則を守らない場合、意図せず法令に違反する可能性があり、状況によっては行政処分や刑事罰の対象になることもあります。

企業会計原則と会計基準の違い

企業会計原則は会計の考え方を示すもので、具体的な会計処理のルールは企業会計基準が規定します。日本では日本会計基準、米国会計基準、IFRS、J-IFRSが利用されています。企業は会計基準に沿って財務諸表を作成することで、他社との比較や投資家への説明がしやすくなります。

会計公準とは

会計公準は、企業会計の基礎となる前提のことです。代表的なものは次の3つです。

  • 企業実体の公準:企業を独立した経済主体として扱う

  • 継続企業の公準:企業は継続して存続するものとする

  • 貨幣的測定の公準:会計処理は貨幣単位で評価する

会計公準は会計原則や基準の土台となります。

まとめ

企業会計原則は、企業会計の基本的な考え方を示す重要なルールです。特に一般原則の7つは、企業の財務報告の信頼性を支える基礎です。実務では企業会計基準が中心となりますが、原則を理解することで適切な会計処理の判断が可能になります。簿記や会計の学習を進めるうえでも、まずはこの原則を押さえておくことが大切です。

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