企業の合併・買収(M&A)やグループ再編のニュースでよく聞く「株式交換」。
難しそうな言葉ですが、実は会社の「親子関係」を作るときによく使われる、基本的な企業再編の手法です。
この記事では、株式交換の意味・しくみ・メリットを初心者にもわかりやすく解説します。
🔹 株式交換とは?
株式交換(かぶしきこうかん)とは、ある株式会社が他の会社(株式会社または合同会社)の株式をすべて取得し、その会社を完全子会社にする手続きのことです。
このとき、株式を取得する側の会社を「完全親会社」、株式を譲渡される側を「完全子会社」と呼びます。
例えば、A社がB社の全株式を取得してB社を自社グループに取り込む場合、A社が親会社、B社が子会社になります。
このように、株式を交換することで会社グループを形成する仕組みが「株式交換」です。
🔹 株式交換のしくみを図でイメージ
たとえば、次のようなケースを考えてみましょう。
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A社(買収会社):B社を完全子会社にしたい
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B社(被買収会社):A社の傘下に入ることを承認
A社はB社株主からB社株をすべて取得し、その**対価(交換の見返り)**として自社の株式を交付します。
このときB社株主は、A社の株主として新たに加わる形になります。
💡 株式交換の対価は「親会社株式」に限らず、「社債」「新株予約権」「現金」「他社株式」など多様な形式が可能です。
(会社法により、柔軟な対価設定が認められています)
また、株式交換を行ってもB社は法人として存続します。
合併のように会社が消滅するわけではなく、B社はA社の完全子会社となるだけです。
この点が「合併」との大きな違いです。
🔹 株式交換のメリット
① 買収資金が不要(現金を使わないM&Aが可能)
株式交換では、買収の対価を株式で支払うことができます。
そのため、買収側企業は現金を用意しなくても他社を完全子会社化できるのです。
スタートアップやベンチャー企業が、手元資金を温存しながらM&Aを行いたい場合によく利用されます。
② 被買収会社の存続が可能(従業員・取引先の影響が少ない)
株式交換を行っても、被買収企業(子会社)は法人格が残り、事業も継続されます。
つまり、合併のように事業や契約関係を引き継ぐ手続きが不要なため、従業員・取引先への影響が小さいのが特徴です。
このため、企業文化やブランドを維持したままグループ入りさせることができ、抵抗感が少ないスムーズな再編が実現します。
③ 株主総会の特別決議で成立
株式交換を実施するためには、買収会社・被買収会社の両方で株主総会の特別決議を得る必要があります。
つまり、次の条件を満たす必要があります。
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出席株主が議決権総数の過半数
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そのうちの 3分の2以上が賛成
したがって、反対株主が3分の1以下であれば、株式交換は成立します。
🔹 株式交換と合併の違い
| 比較項目 | 株式交換 | 合併 |
|---|---|---|
| 子会社の存続 | 存続する | 消滅する(吸収される) |
| 財産の移転 | なし | あり |
| 買収資金 | 株式・社債・現金など柔軟 | 現金または株式 |
| 従業員・取引先への影響 | 少ない | 大きい場合がある |
株式交換は、会社を消滅させずにグループ化できる点で、より柔軟な再編方法といえます。
🔹 まとめ|株式交換はM&Aの有力な選択肢
株式交換は、企業グループ再編やM&Aにおいて非常に重要な手法です。
特に「資金を使わずに他社を子会社化したい」「ブランドや事業を残したい」といったケースで効果的です。
ただし、手続きには法的・会計的な検討が欠かせません。
専門家(公認会計士・税理士・M&Aアドバイザー)に相談しながら進めることをおすすめします。
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