企業再編とは

企業再編とは?種類と目的をわかりやすく解説

企業再編(きぎょうさいへん)とは、企業が効率的な経営体制の構築事業の成長・再構築を目的に、自社またはグループ会社の事業・組織を再編成することをいいます。
「企業組織再編」とも呼ばれ、M&A(合併・買収)や事業譲渡、会社分割などのさまざまな形で行われます。

2005年に施行された会社法により、企業再編の制度は大きく見直され、手続きの柔軟化や多様な再編スキームの活用が可能になりました。
現在では、大企業だけでなく中小企業においても、事業承継や経営効率化の手段として企業再編が一般的になっています。

企業再編の主な種類

企業再編には、組織変更、合併、会社分割、株式交換・株式移転、事業譲渡といった複数の方法があります。
それぞれの特徴を簡単に説明します。

組織変更

株式会社が合同会社(LLC)・合名会社・合資会社といった「持分会社」に形態を変更すること、またはその逆をいいます。
会社形態を変えることで、意思決定の柔軟性を高めたり、税務上のメリットを得たりできます。
株式会社では株主全員の同意、持分会社では社員全員の同意が必要です。

吸収合併・新設合併

吸収合併は、消滅する会社の権利義務を存続会社に引き継がせる手法です。
一方、新設合併は、新たに設立した会社が合併によって消滅した会社の権利義務を承継します。

吸収合併はスピーディーな再編が可能で、既存企業への統合に向いています。
新設合併は、複数企業の対等合併などに用いられ、まったく新しい企業体をつくる際に選ばれます。

吸収分割・新設分割

吸収分割は、既存の会社に事業の一部を承継させる方法、
新設分割は、新しい会社を設立して事業を承継させる方法です。

たとえば、事業部門ごとに会社を分けることで経営責任を明確にしたり、採算の悪い部門を切り離したりできます。
柔軟な事業再編を行う上で、会社分割は非常に重要な手法です。

株式交換・株式移転

株式交換とは、ある企業が他社を完全子会社化する際に、自社株式を対価として交付する方法です。
資金を用いずに買収ができる点が大きな特徴です。

株式移転は、複数の会社が新たに設立する「親会社」に株式を移すことで、グループ体制を再構築する手法です。
グループ企業間の統合や持株会社の設立によく利用されます。

事業譲渡

事業譲渡とは、会社の事業の全部または一部を契約により他社へ譲渡する方法です。
譲渡する側は会社を存続させたまま不要な事業を切り離すことができ、
譲り受ける側は必要な事業だけを取得できるというメリットがあります。

M&A市場では、スモールM&A(中小企業間の取引)にも多く用いられる代表的なスキームです。

企業再編が行われる背景と目的

企業再編が進む背景には、次のような社会的・経済的要因があります。

  • グローバル競争の激化

  • デジタル化による産業構造の変化

  • 経営効率化・コスト削減の必要性

  • 事業承継・後継者不足問題

  • 法制度の整備(2005年の会社法制定による規制緩和)

企業再編の目的は、単なる合併や分割ではなく、企業価値の最大化にあります。
例えば、大企業が新規事業への集中を図るために不採算事業を切り離したり、
中小企業が後継者不足を補うために他社と統合したりするケースも増えています。

企業再編を行う際の注意点

企業再編には、税務上の取り扱い会計処理が複雑に絡みます。
たとえば、適格合併・適格分割といった「課税の繰延べ」が認められるケースもありますが、
条件を満たさないと課税対象となるため、慎重な検討が必要です。

また、従業員の雇用契約の承継や債務関係の引き継ぎなど、法的リスクも伴います。
実施にあたっては、税理士、公認会計士、弁護士などの専門家の支援を受けることが不可欠です。

まとめ:企業再編は経営戦略の重要な選択肢

企業再編は、単なる「会社の合併や分割」ではなく、
企業が将来に向けて経営資源を最適化するための戦略的な手段です。

事業の成長、経営の効率化、後継者問題の解決など、目的に応じた最適な再編スキームを選択することが成功のカギとなります。
企業の現状を正確に分析し、法務・会計・税務の観点から慎重に進めることが大切です。

さらに参照してください:

共同事業とは?税務上の「適格組織再編」との関係をわかりやすく解説