決算を終えてホッと一息…と思った矢先に、企業の財務に大きな影響を与える出来事が発生することがあります。
たとえば、主要取引先の倒産や自然災害による損害など。
こうした「決算日以降」に発生した事象をどう会計処理すべきか――
それが今回のテーマ「後発事象(こうはつじしょう)」です。
本記事では、企業会計における後発事象の定義から、修正・開示の違い、監査での取り扱いまで、実務的な観点からわかりやすく解説します。
🔍 後発事象とは?基本の定義を理解しよう
「後発事象」とは、決算日後に発生した、会社の財政状態や経営成績、キャッシュ・フローに影響を与える会計事象のことです。
つまり、決算が終わった後でも、企業の状況を大きく変えるような出来事が起きた場合には、それを無視せず、必要に応じて財務諸表に反映または注記しなければなりません。
📘参考:企業会計原則注解1-3では
「損益計算書および貸借対照表を作成する日までに発生した重要な後発事象を注記する」と定められています。
💡 後発事象を開示する意義
企業が後発事象を開示する目的は、投資家や利害関係者が企業の財政状態を正確に把握できるようにするためです。
たとえば上場企業では、投資家が正しい投資判断を行うために、ディスクロージャー(情報開示)制度のもとで正確な情報を提供することが求められます。
つまり、後発事象の開示は、投資者保護の観点からも極めて重要な役割を担っています。
🧩 後発事象の分類:修正と開示の2つのタイプ
後発事象は、その性質に応じて次の2種類に分類されます。
① 修正後発事象(財務諸表を修正すべき事象)
決算日後に発生したものの、原因が決算日時点で既に存在していた場合に該当します。
財務諸表を修正し、数値を変更する必要があります。
具体例:
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決算日後に係争事件が解決し、実際に債務が確定した場合
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決算日後に取引先が倒産し、売掛金が回収不能になった場合(貸倒引当金の追加が必要)
② 開示後発事象(注記すべき事象)
決算日後に発生し、翌期以降の財務諸表に影響を与える事象を指します。
この場合は財務諸表を修正せず、注記として情報を開示します。
具体例:
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大規模な合併や会社分割の決定
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重要な取引先の破産、主要事業の撤退
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火災・震災などによる重大な損害
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大規模な設備投資や希望退職募集の実施
⚖️ 重要な後発事象とは?
「重要な後発事象」とは、金額的または質的に企業へ重大な影響を与える事象のことを指します。
このような事象は、修正または注記のいずれかで開示し、投資家や関係者が企業の現状を正しく理解できるようにする必要があります。
見積額が不明な場合でも、「見積もりができない理由」を明記しておくことが求められます。
🧮 監査上の取り扱い:監査人が注目するポイント
監査人は、監査報告書日までに発生した後発事象について、その影響を評価します。
もし財務諸表に修正や開示が必要な後発事象があるにもかかわらず、それが反映されていない場合、監査意見に影響する可能性があります。
🔎 開示例:火災による損害発生
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発生時期と概要
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被害の範囲と損害額
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復旧の見通し
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営業活動への影響
🔎 開示例:係争事件の発生または解決
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訴訟の内容と相手方
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請求金額・要求内容
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進行状況および会社の見解
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判決・和解の結果
🌍 国際基準との違い:IFRSの後発事象
国際会計基準(IFRS)では、後発事象(Subsequent event)の範囲が「期末日から財務諸表の公表承認日まで」とされ、日本基準よりも期間が長い点が特徴です。
ただし、会計処理の考え方はほぼ同じで、修正の要否を「決算日時点の原因が存在していたか」で判断します。
✅ まとめ:後発事象の開示は信頼される企業への第一歩
後発事象は、企業の信頼性を左右する重要な情報開示項目です。
特に上場企業や監査対象会社にとっては、正確・適時・誠実な開示が求められます。
✔ 決算日後に起きた出来事でも、財務に影響を与えるなら見逃さない
✔ 原因が決算日時点に存在していたかで修正・開示を判断
✔ 重要な事象は必ず注記し、透明性を確保する
正しい後発事象の処理は、企業の透明性と信頼性の向上につながります。
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