企業が新しい建物や設備を建設する際、工事中に発生する支出はどのように会計処理すれば良いのでしょうか?
完成していない資産をそのまま「固定資産」に計上してしまうと、正確な資産価値がわからなくなる可能性があります。
そこで登場するのが「建設仮勘定(けんせつかりかんじょう)」です。本記事では、その仕組みから仕訳方法、税務上の扱いまでわかりやすく解説します。
建設仮勘定とは
建設仮勘定とは、企業が固定資産を建設中または製作中の段階で、その支出を一時的に記録しておくための勘定科目です。
建物や機械などが完成して引き渡しを受けた段階で、建設仮勘定から「建物」や「機械装置」などの有形固定資産に振り替え、減価償却を開始します。
工事中の資産はまだ事業の用に供されていないため、会計上は「仮の資産」として処理します。
これにより、工事費用を明確に管理し、資産の取得原価を正確に把握することができます。
建設仮勘定と固定資産の関係
建設仮勘定は、完成前の支出を管理するための一時的な科目であり、工事が完了して引き渡しを受けた時点で固定資産に振り替えます。
例えば、自社オフィスを建設している場合、工事中の支出はすべて建設仮勘定に計上し、完成時に「建物」勘定へ振り替えることになります。
建設仮勘定の仕訳方法(具体例付き)
手付金の支払い時
例:自社オフィス建設のため、手付金として1億円を支払った場合
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | 摘要 |
|---|---|---|---|---|
| 建設仮勘定 | 100,000,000円 | 当座預金 | 100,000,000円 | 建設工事手付金の支払 |
追加支払いを行った場合
例:中間金として3,000,000円を支払った場合
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | 摘要 |
|---|---|---|---|---|
| 建設仮勘定 | 3,000,000円 | 当座預金 | 3,000,000円 | 工事進行に伴う中間金支払 |
完成引き渡し時
例:総工費5億円のうち1億円を手付金として支払い済み、残り4億円を引き渡し時に支払った場合
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | 摘要 |
|---|---|---|---|---|
| 建物 | 500,000,000円 | 当座預金 | 400,000,000円 | 建設仮勘定 |
この処理で建設仮勘定の残高は消え、資産勘定に反映されます。
建設中止時の仕訳
工事が中止になった場合、建設仮勘定に計上されていた金額は「特別損失」として処理します。
| 借方 | 金額 | 貸方 | 金額 | 摘要 |
|---|---|---|---|---|
| 特別損失 | 13,000,000円 | 建設仮勘定 | 13,000,000円 | 工事中止による損失 |
建設仮勘定の減価償却と税務処理
建設仮勘定は減価償却の対象外です。なぜなら、建設中の段階ではまだ使用を開始していないためです。
完成して固定資産勘定に振り替えたタイミングで、減価償却が始まります。
また、消費税については、支払いの段階で課税仕入れとして処理します。ただし、建設が複数年度にまたがる場合は、消費税額を年度ごとに正確に把握しておくことが重要です。
減損の対象となるケース
建設仮勘定も場合によっては減損の対象となります。
例えば、建設が大幅に遅延したり、中止となった場合には、投資額の回収が難しくなるため、回収可能額まで帳簿価額を切り下げる必要があります。
建設仮勘定に計上できる有形固定資産
建設仮勘定の対象は、自社で使用する固定資産に限られます。
代表的な例としては以下のようなものがあります。
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建物・附属設備(事務所、工場、倉庫など)
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機械装置(製造設備、医療機器など)
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構築物(舗装道路、看板、ネオンサインなど)
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陸上運搬具(自動車、貨物車など)
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工具器具備品(耐用年数1年以上のもの)
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土地(手付金支払い時)
販売目的で建設するもの(不動産販売など)は建設仮勘定ではなく、「未成工事支出金」として処理します。
まとめ:建設仮勘定を正しく理解して資産管理を適切に
建設仮勘定は、建設中の資産に関する支出を正確に管理するための重要な勘定科目です。
正しい仕訳を行い、完成時には必ず固定資産へ振り替えることが求められます。
また、税務処理や減損の判断にも関係するため、定期的に内容を確認しておくことが大切です。
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