建設業会計の特徴とは

建設業会計の特徴とは?初心者にもわかる仕訳と勘定科目の基本ガイド

建設業は、他の業種と比べて会計処理が複雑になりやすい業種です。
なぜなら、工事の着工から引き渡しまでに長い期間を要し、その間に多額の費用や取引が発生するためです。

この記事では、建設業会計の特徴や、実務でよく使われる勘定科目や仕訳例について、初心者にもわかりやすく解説します。

🔹 建設業会計とは?

「建設業会計」とは、建設業に特有の取引を正しく処理するための会計方法のことです。
建設業は、工事契約ごとに収益・費用を計上するため、通常の商業簿記とは異なる仕訳が必要になります。

具体的には、以下のような特徴があります。

  • 売上の認識を「工事完成時」または「進行状況」に応じて判断する

  • 工事ごとに原価を集計・管理する

  • 「完成工事高」「未成工事支出金」など、独自の勘定科目を使用する

このように、建設業会計は工業簿記の原価計算をベースに発展した会計体系といえます。

🔹 工事契約の特徴と会計基準

建設業の多くは「請負契約」に基づいて行われます。
これは、注文を受けてから工事を開始し、完成後に対価を受け取る契約形態です。

会計処理では、「工事契約に関する会計基準」に基づき、工事ごとの収益・費用を次の2つの方法で認識します。

1️⃣ 工事進行基準

工事の進捗度に応じて収益と費用を認識します。
たとえば、工事全体の70%が進んでいれば、契約金額の70%を当期の売上として計上します。

2️⃣ 工事完成基準

工事がすべて完了し、引き渡した時点で収益を計上する方法です。
進行状況の見積もりが難しい場合などはこちらを適用します。

なお、大規模工事(例:請負金額10億円以上など)の場合は、工事進行基準の適用が義務付けられています

🔹 建設業でよく使う勘定科目

建設業には、他の業種では見られない独自の勘定科目が多く存在します。
以下に主要なものを紹介します。

勘定科目 意味 一般会計での対応科目
完成工事高 完成した工事の売上 売上高
完成工事原価 完成した工事にかかったコスト 売上原価
完成工事総利益 完成工事高 − 完成工事原価 粗利益
未成工事支出金 まだ完成していない工事にかかった費用 仕掛品
完成工事未収入金 計上済みだが未回収の工事代金 売掛金
未成工事受入金 工事完成前に受け取った前金 前受金
工事未払金 工事原価のうち未払い分 買掛金・未払金

🔹 仕訳の具体例

ここでは、代表的な取引の仕訳例をいくつか紹介します。

✅ 例1:工事が完成し、代金が後日入金される場合

借方 金額 貸方 金額
完成工事未収入金 50,000千円 完成工事高 50,000千円

→ 「完成工事未収入金」は、売上を計上したがまだ回収していない金額です。

✅ 例2:工事進行中の費用を計上する場合

借方 金額 貸方 金額
未成工事支出金 10,000千円 材料費 3,000千円
労務費 5,000千円
経費 2,000千円

→ 工事が完成していないため、これらの費用は「未成工事支出金」として資産計上します。

✅ 例3:完成工事の原価を振り替える場合

借方 金額 貸方 金額
完成工事原価 30,000千円 未成工事支出金 30,000千円

→ 工事が完成した段階で、これまでの支出金を「完成工事原価」に振り替えます。

✅ 例4:工事代金の入金処理

借方 金額 貸方 金額
現金預金 10,000千円 完成工事未収入金 10,000千円

→ 売上を計上済みで、実際に入金があった場合の処理です。

🔹 建設業会計で注意すべきポイント

  1. 工事単位で原価と収益を管理すること
     複数工事を同時に行う場合、工事ごとの進捗や原価を正確に区分する必要があります。

  2. 収益認識基準の選択に注意すること
     進行基準か完成基準かを適切に判断しないと、収益のタイミングがずれ、決算に影響します。

  3. 勘定科目を誤用しないこと
     「仕掛品」「売掛金」など一般用語で処理してしまうと、建設業特有の管理ができなくなります。


🔹 まとめ

建設業会計は、長期契約・多額取引という業界の特性に対応するため、
他業種とは異なる独自の会計処理ルールが設けられています。

特に「工事進行基準」「完成工事高」「未成工事支出金」などの科目や処理を正しく理解することで、
より正確で信頼性の高い財務情報を作成することができます。

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