株主資本とは

株主資本とは?自己資本・純資産との違いをわかりやすく解説

「株主資本」「自己資本」「純資産」――この3つの言葉、なんとなく同じ意味で使っていませんか?
実は、似ているようで明確に異なる概念です。この記事では、会計のプロが初心者にもわかりやすく、3つの違いと関係性を丁寧に解説します。

🔹 株主資本とは?

株主資本(しゅうししほん)とは、企業が株主からの出資をもとに事業を行い、そこから生じた利益を含めた「株主に帰属する資本」のことです。
貸借対照表(バランスシート)では、「純資産の部」の中心に位置しています。

株主資本の内訳

株主資本は、次の4項目で構成されています。

項目 内容
資本金 株主が会社に出資した金額のうち、資本金として計上された部分
資本剰余金 出資金のうち、資本金にしなかった余剰分(資本準備金など)
利益剰余金 会社の利益のうち、配当などで支出されず内部に蓄えられた金額
自己株式 会社が自社株を買い戻した分(マイナス項目)

つまり、株主資本とは「株主から預かったお金+会社が稼いだお金 − 自社株式」のことを指します。

🔹 自己資本とは?

自己資本は、企業が返済義務のない資金の合計を表します。
つまり、会社自身の資金力を示す指標です。借入金などの「他人資本」と対になる概念ですね。

自己資本の構成要素は次の通りです:

自己資本 = 株主資本 + その他包括利益累計額

「その他包括利益累計額」とは、保有資産の評価替えや為替換算差額など、まだ実現していない利益を含んだ金額です。
このため、株主資本よりもやや広い意味を持ちます。

🔹 純資産とは?

純資産とは、会社の総資産から負債を差し引いた残りの金額を指します。
つまり、企業全体の「本当の持ち分(正味財産)」です。

純資産 = 自己資本 + 新株予約権 + 非支配株主持分(※連結決算時)

このように、「純資産」は自己資本をさらに広げた概念で、株主以外の持分も含むのが特徴です。

🔹 3つの関係を図で整理

3つの関係性は次のように整理できます。

株主資本 ⊂ 自己資本 ⊂ 純資産

言い換えると:

  • 株主資本 → 株主の持ち分

  • 自己資本 → 会社全体の返済不要の資金

  • 純資産 → 株主+その他の持分を含む広い範囲

 

🔹 実務での使い分けポイント

用語 主な使用場面 意味・特徴
株主資本 貸借対照表・会社法上 株主に帰属する資本
自己資本 財務分析・経営指標 返済不要の資金の合計
純資産 会計基準・開示資料 会社全体の正味資産

経理担当者や経営者が財務分析を行う際は、「自己資本比率」などを指標として用います。一方、株主との関係を示す際は「株主資本の部」を重視します。

🔹 具体例で理解しよう

たとえば、以下のような貸借対照表の一部を見てみましょう。

項目 金額(円)
資本金 10,000,000
資本剰余金 2,000,000
利益剰余金 8,000,000
自己株式 ▲500,000
その他包括利益累計額 300,000
新株予約権 100,000

この場合:

  • 株主資本 = 10,000,000 + 2,000,000 + 8,000,000 − 500,000 = 19,500,000円

  • 自己資本 = 株主資本 + 300,000 = 19,800,000円

  • 純資産 = 自己資本 + 100,000 = 19,900,000円

となります。

🔹 よくある質問(FAQ)

Q1. 株主資本と自己資本は同じですか?
A. 似ていますが異なります。株主資本は株主の出資+利益の合計、自己資本はそれに未実現利益などを加えたものです。

Q2. 自己資本比率とは?
A. 総資産に対して自己資本がどの程度を占めるかを示す指標で、企業の安全性を測る基本の数字です。
計算式:

自己資本比率 = 自己資本 ÷ 総資産 × 100(%)

Q3. 株主資本がマイナスになったら?
A. 純資産がマイナスになる「債務超過」の可能性があります。企業の財務健全性が低下している状態です。

🔹 まとめ:3つの違いを正しく理解して財務の基礎を固めよう

用語 意味の範囲
株主資本 株主の資本
自己資本 株主資本+未実現利益
純資産 自己資本+他の持分

3つの概念を正しく理解することで、決算書の読み取り力や財務分析力が格段に向上します。
経営者や経理担当者だけでなく、投資家や個人事業主にも必須の知識です。

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