上場企業の決算情報を調べていると、「有価証券報告書」よりも「四半期報告書」を目にする機会が多いのではないでしょうか?
四半期報告書は、投資家や関係者が企業の業績をよりタイムリーに把握するために作成される重要な書類です。
本記事では、
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四半期報告書の意味
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提出期限や対象企業
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有価証券報告書・決算短信との違い
を、会計の専門家がわかりやすく解説します。
四半期報告書とは?
四半期報告書とは、金融商品取引法(金商法)に基づき、上場企業などが3か月ごとに提出する報告書のことです。
四半期ごとの業績や財務状況を開示することで、投資家がより正確な判断を行えるようにする目的があります。
例えば、3月決算の会社の場合、以下のように4回の報告が行われます。
| 期間 | 報告書名 | 開示時期の目安 |
|---|---|---|
| 第1四半期(1Q)4月〜6月 | 第1四半期報告書 | 8月15日頃まで |
| 第2四半期(2Q)7月〜9月 | 第2四半期報告書 | 11月15日頃まで |
| 第3四半期(3Q)10月〜12月 | 第3四半期報告書 | 翌年2月15日頃まで |
| 第4四半期(4Q)1月〜3月 | 有価証券報告書で開示 | 6月頃まで |
このように、第4四半期は有価証券報告書にまとめて開示されます。
四半期報告制度の目的と背景
四半期報告制度は、2006年の証券取引法改正で導入されました。
以前は「有価証券報告書」と「半期報告書」のみで、年2回の開示が主流でしたが、欧米諸国と比較して情報開示の頻度が少なく、投資家が最新情報を得にくいという課題がありました。
そこで導入されたのが四半期報告制度です。
この制度によって、上場企業は年4回の業績報告を行うことが義務化され、投資家や市場に対してより迅速・透明性の高い情報開示が可能となりました。
四半期報告書の対象企業
四半期報告書を提出する義務があるのは、証券取引所に上場している企業(上場会社)です。
金商法により、上場企業および旧店頭登録会社が対象と定められていますが、現在は店頭登録会社が存在しないため、実質的には上場企業のみが該当します。
ただし、銀行や投資ファンドなど一部の金融機関は例外的に「半期報告書」を提出する場合があります。
これは、自己資本比率規制により、四半期ベースではなく半期単位での開示が求められるためです。
四半期報告書の提出期限
四半期報告書は、各四半期の会計期間終了後45日以内に提出する必要があります。
たとえば、3月決算企業であれば以下のスケジュールが一般的です。
| 期間 | 決算短信公表 | 四半期報告書提出期限 |
|---|---|---|
| 第1四半期 | 7月末ごろ | 8月15日前 |
| 第2四半期 | 10月末ごろ | 11月15日前 |
| 第3四半期 | 1月末ごろ | 2月15日前 |
なお、新型コロナウイルスなどの影響により期限内の提出が難しい場合は、財務局長の承認を得て提出期限を延長することも可能です。
四半期報告書の主な内容
四半期報告書には、投資判断に必要なさまざまな情報が含まれています。
| 区分 | 主な内容 |
|---|---|
| 企業情報 | 売上高・純利益などの主要財務数値、事業概要 |
| 事業の状況 | 経営者による分析、リスク情報、重要契約など |
| 提出会社の状況 | 株式・役員・自己株式の情報 |
| 経理の状況 | 四半期財務諸表、注記、セグメント情報 |
| 監査報告書 | 監査法人によるレビュー意見(無限定適正意見が原則) |
また、第1・第3四半期ではキャッシュ・フロー計算書が省略され、第2四半期のみ開示されます。
四半期報告書に「監査」は必要?
四半期報告書には、監査法人による「レビュー」が行われます。
これは、有価証券報告書の「監査」よりも簡易な形式で、短期間で実施される点が特徴です。
| 項目 | 有価証券報告書(監査) | 四半期報告書(レビュー) |
|---|---|---|
| 意見の形式 | 積極的形式 | 消極的形式 |
| 保証の程度 | 合理的保証 | 限定的保証 |
| 主な手続き | 実地調査・突合など | 質問・分析中心 |
レビューの結果、重大な誤りがないと判断されれば「無限定適正意見」が表明され、信頼性の高い財務情報として扱われます。
四半期報告書と他の報告書の違い
上場企業が開示する決算関連の書類には、主に以下の3つがあります。
| 書類名 | 提出期限 | 根拠法令 | 監査の有無 | 主な目的 |
|---|---|---|---|---|
| 決算短信 | 30〜45日以内 | 取引所規則 | なし | 決算速報の開示 |
| 四半期報告書 | 45日以内 | 金商法 | レビューあり | 迅速な情報開示 |
| 有価証券報告書 | 決算後3か月以内 | 金商法 | 監査あり | 詳細な情報開示 |
特に四半期報告書は「速報」と「詳細」の中間に位置づけられ、投資家にとって最もタイムリーな判断材料になります。
まとめ|四半期報告書を理解して企業の「今」を読む力をつけよう
四半期報告書は、上場企業の「いまの姿」を知るうえで欠かせない資料です。
提出期限や内容を理解すれば、ニュースで見かける決算発表や業績変動の背景をより深く読み解けるようになります。
もし自社で決算書を作成したい方は、以下のような専門ガイドを活用すると便利です。
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