製造業の決算や工業簿記を学ぶと必ず出てくるのが「仕掛品」。ただ、言葉だけだとイメージしづらく、半製品とどう違うの?棚卸ではどう扱うの?と迷う人は多いです。
この記事では、仕掛品の意味、半製品との違い、評価方法、仕訳例まで初心者向けにやさしく解説していきます。日常の製造現場をイメージしながら読める内容なので、初めて勉強する人にもおすすめです。
仕掛品とはどんなもの?
仕掛品(しかかりひん)とは「製造途中でまだ完成していない製品」のこと。
原材料に加工が一部でも加わっていれば、それは仕掛品として扱われます。
例を挙げるね。
クッキーを製造している会社の場合
・小麦粉やバターなどの材料
・製造に関わる作業員の給与(労務費)
・消耗品費や減価償却費などの製造経費
これらは最初にすべて「仕掛品」勘定に集められます。
そして加工が進み、完成したものが「製品」として振り替えられます。
つまり仕掛品は「材料が投入され、製品になる途中にあるモノ」。
製造原価を正しく集計するための重要な棚卸資産です。
半製品との違い
仕掛品に似た用語として「半製品(はんせいひん)」があります。
違いを一言でまとめるとこうなるよ。
・仕掛品
→まだ外部に売れない。あくまで社内で加工途中のもの。
・半製品
→社内で使う中間製品だけど、そのまま外部に販売できる状態。
クッキー工場の例なら、
・成形したクッキー生地を外部に販売することができるなら半製品
・まだ形にもなっていない生地は仕掛品
というイメージ。
棚卸資産の表示順序では「現金化しやすい順」で並べるため、
製品 → 材料 → 半製品 → 仕掛品
という配置になるのが一般的です。
仕掛品の評価方法
仕掛品は棚卸資産に該当するため、期末には評価し、貸借対照表に計上します。
法人税では、棚卸資産ごとに一定の方法で評価することが定められており、
仕掛品は次の区分の一つとして扱われます。
-
商品・製品
-
半製品
-
仕掛品
-
主要原材料
-
補助材料・その他の棚卸資産
評価方法は大きく「原価法」と「低価法」に分かれます。
原価法の主な種類
・最終仕入原価法
・個別法
・先入先出法
・総平均法
・移動平均法
・売価還元法
実務では、税務署への事前届出が不要の法定評価方法「最終仕入原価法」を採用する企業が多いです。
年度末に最も近い仕入価格を評価額にするため、作業負担も比較的軽い方法です。
なお、かつて存在した「後入先出法」はIFRSで不採用となり、日本の会計基準でも廃止されています。
仕掛品の仕訳はどうなる?
仕掛品は製造原価を集計する中心的な勘定科目。
基本的な仕訳は次の流れになります。
1. 仕掛品へ原価を投入
(例)材料費を仕掛品勘定へ振り替える
借方:仕掛品 2,100
貸方:材料費 2,100
同様に労務費や製造経費も仕掛品に計上していきます。
2. 完成したら製品勘定へ振り替え
借方:製品 4,900
貸方:仕掛品 4,900
3. 期末棚卸での評価額の振替
借方:期末仕掛品
貸方:仕掛品
(またはその逆の仕訳)
実務では会計ソフトが自動で処理することが多いですが、仕組みを理解しておくと原価管理の理解が深まります。
仕掛品管理が重要な理由
仕掛品が多すぎると、次のような問題につながります。
・製品として完成する量が少ないため売上が伸びない
・不良在庫が増え、生産性が低下する
・棚卸作業が複雑になり管理コストが増える
・製造リードタイムが長くなり品質にも影響する場合がある
一方、適切に管理された仕掛品は
「翌期の売上を支える大切な資産」
にもなります。
製造業にとって仕掛品とは、材料が製品に変わっていく過程すべての管理そのもの。
工程ごとに状況を把握し、自社に合った原価管理方法を確立することが大切です。
まとめ
仕掛品は製造過程で発生する未完成品で、製造原価を正確に把握するうえで欠かせない存在です。
半製品との違いを理解し、棚卸資産として適切に評価することで、製品の採算性や生産効率の改善にもつながります。
初心者でも仕掛品の考え方を押さえれば、工業簿記や原価計算の理解は一段深まります。
自社の生産プロセスを見直すきっかけとして、ぜひ活用してみてください。
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