「単式簿記って家計簿みたいなもの?」と聞かれたら、大きく間違いではありません。
実際、単式簿記はもっともシンプルな記帳方法で、収支の記録を中心にお金の動きを把握するための仕組みです。
この記事では、単式簿記の意味やメリットデメリット、そして複式簿記との違いを会計初心者でも理解しやすい形でまとめています。簿記の種類を比較したい人や、白色申告をしている個人事業主にも役立つ内容です。
単式簿記とは?一つの取引を一つの記録で残す方法
単式簿記(たんしきぼき)とは、一つの取引につき一つの記録を行う会計方法のことです。
たとえば「10月30日 家賃 150,000円」のように、日付と内容、金額をシンプルに記録します。
特徴はとにかく分かりやすいこと。
「お金が入った」「お金を使った」という事実だけに注目して記録するので、家計簿やお小遣い帳など、日常のお金管理にも用いられています。
なお、白色申告の場合は単式簿記でも複式簿記でもOK。ただし青色申告では複式簿記が必須です。
単式簿記の歴史をかんたんに
簿記の起源は古代ローマまでさかのぼると言われています。当時は単式簿記が主流で、「入った」「出た」という情報だけを記録していました。
その後、14世紀ごろにヴェネチア商人の間で複式簿記が誕生。取引の原因と結果を同時に記録する方法が求められたためです。
一般的には単式簿記が先にあり複式簿記が生まれたとされていますが、逆に「複式簿記が先で、その簡略化が単式簿記になった」とする説もあります。どちらにしても、単式簿記は簡易な記帳を目的に広まっていった方法だと言えます。
単式簿記の書き方はとてもシンプル
収入・支出・残高だけを1行で記録します。例として現金出納帳のイメージを紹介します。
日付/摘要/収入/支出/残高
10月1日/繰越/ / /100,000円
10月3日/売上/40,000円/ /140,000円
10月4日/仕入/ /50,000円/90,000円
10月7日/普通預金へ振替/ /60,000円/30,000円
こんな感じで、流れが一目で分かります。
単式簿記と複式簿記の違い
複式簿記は「仕訳」という形式を使い、取引の原因と結果をセットで記録する方法です。
例:
10月3日 借方:預金 40,000円/貸方:売上 40,000円
複式簿記の方が情報量は多く、財務状況を正確に把握できます。ただし、勘定科目を理解したり仕訳を作成したりする必要があるため、単式簿記より手間はかかります。
最近は会計ソフトが非常に使いやすくなっているので、個人事業主でも複式簿記を選ぶ人は増えています。青色申告特別控除を受けるためにも重要なポイントです。
単式簿記のメリット
単式簿記の良さは次の二つに集約できます。
1. 収支を簡単に記録できる
お金が動いた事実だけを記録すればいいため、帳簿づけに時間がかかりません。
また、一定期間の収入や支出を合算しやすいのも魅力です。
2. 会計の専門知識が不要
勘定科目や仕訳を理解しなくても記帳できるため、会計初心者でも始めやすい方法です。
家計簿レベルの管理に向いており、複式簿記に比べて心理的ハードルも低めです。
単式簿記のデメリット
メリットが多い一方で、以下のような弱点もあります。
1. 青色申告特別控除を受けられない
青色申告特別控除65万円を受けるには、複式簿記での帳簿作成が必須条件です。
単式簿記のままでは控除対象外となり、節税面で大きな差が出る場合があります。
2. 経営状況の正確な把握が難しい
単式簿記はお金の増減しか分からないため、
• どの事業が利益を出しているか
• 在庫や売掛金の状態
• 現金以外の資産の動き
といった「経営判断に必要な情報」が不足しがちです。事業規模が大きくなるほど不向きになります。
まとめ:目的に合わせて簿記方式を選ぶことが大切
単式簿記は、とにかくシンプルで誰でも扱いやすい記帳方法です。家計簿や小規模の収支管理には最適ですが、事業を運営する上では必要な情報を十分に得られない場合があります。
一方、複式簿記は情報量が多く、経営判断や節税に役立つのが大きなメリット。最近は会計ソフトで作業を自動化できるため、個人事業主でも十分に活用できます。
目的が「簡単な収支管理」なのか「事業の財務管理」なのかによって選ぶべき方法は変わります。あなたの状況に合った簿記方法を選ぶことで、日々の記帳がもっと楽になりますよ。
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