企業経営や株式投資に関心がある方なら、「配当可能限度額」という言葉を耳にしたことがあるかもしれません。
これは、会社が株主に利益を分配する際の上限額を定めた重要な概念です。
本記事では、配当可能限度額の基本から具体的な計算方法まで、初心者にもわかりやすく解説します。
配当可能限度額とは?
配当可能限度額とは、会社法で定められた「株主に配当できる剰余金の上限」のことを指します。会社法第453条・第454条1項では、株式会社は株主総会の決議を経れば、事業年度中でも何度でも剰余金の配当が可能とされています。
ただし、配当は会社の健全な資本状況を維持できる範囲で行わなければなりません。赤字の年度であっても、資本を減らさずに可能な場合に限り配当が認められるのです。
配当可能限度額の考え方
配当可能限度額を理解するためには、まず「剰余金」とは何かを知る必要があります。剰余金とは、会社が事業で得た利益のうち、資本準備金や利益準備金として積み立てられたものを除いた残りの利益です。
配当可能限度額は、年度末の剰余金からその後の配当や自己株式の償却などを加減算して計算されます。なお、期中に生じた損益は自動的には加算されないため、臨時決算を行うことで配当に反映させることが可能です(会社法第461条)。
配当可能限度額の計算方法
配当可能限度額は、基本的に次の計算式で求められます。
分配可能利益(配当可能限度額)=純資産額 − (資本の額+資本準備金+利益準備金+当期積立分の利益準備金)
具体的には、以下の3ステップで算定されます。
1. 事業年度末日の剰余金の算定
事業年度末の剰余金は、会社の総資産に自己株式の帳簿価額を加え、負債・資本金・準備金などを差し引くことで求められます。結果として、
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その他資本金剰余金
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その他利益剰余金
の合計が剰余金となります。
2. 分配時点の剰余金の算定
決算日後の分配時点において、剰余金に以下の項目を加減算します。
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自己株式の処分損益
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資本金・準備金の減少
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自己株式の消却額
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既に行った剰余金の配当
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その他法務省令で定める額
この結果、分配時点の剰余金が算出されます。
3. 分配可能限度額の算定
最後に、分配可能限度額は次のように計算されます。
分配可能限度額=分配時点の剰余金 − 自己株式の帳簿価額 − 期中に処分した自己株式の処分価額 − その他法務省令で定める額
この計算結果が、株主に配当できる上限額となります。
まとめ
配当可能限度額は、株主への利益還元と会社の資本保全を両立させるための重要な制度です。計算方法は一見複雑ですが、事業年度末の剰余金を基点に、分配時点での増減や自己株式の処理を加減算する流れを理解すれば、初心者でも理解できます。
株主への安定した配当を実現するためには、配当可能限度額を正しく把握することが不可欠です。会社法に沿った適切な計算と管理が、企業経営の健全性を支えるポイントとなります。
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