持合株式(もちあいかぶしき)は、日本企業の経営を語るうえで欠かせないキーワードの一つです。
かつては日本の大企業で広く利用されていた仕組みであり、現在でも一部の業界で見られます。
この記事では、持合株式の基本的な意味から、その目的、メリット・デメリット、歴史的な背景まで、初心者にもわかりやすく丁寧に解説します。
持合株式とは?
持合株式とは、複数の企業や金融機関同士が「お互いに相手企業の株式を保有し合うこと」を指します。
たとえば、A社がB社の株式を保有し、同時にB社もA社の株式を保有する——このような関係が「株式の持ち合い」です。
この仕組みは、とくに日本企業のグループ経営や長期的な取引関係を安定させる目的で利用されてきました。
持合株式が用いられる理由
1. 取引関係の強化・安定
主要な取引先同士が株を持ち合うことで、長期的な協力関係を築きやすくなります。
「安定した取引先であってほしい」「突然の離脱を避けたい」という企業の思惑に合致します。
2. 経営権の安定化(敵対的買収の防止)
海外資本が日本へ進出し始めた時期、企業買収(M&A)への警戒感が高まりました。
取引先や金融機関と株を持ち合うことで、外部から大量に株を買い占められるリスクを軽減し、経営権の防衛につながります。
3. 資本協力による事業拡大
互いに出資し合うことで、事業提携やグループ戦略を進めやすくなります。
大規模な投資を進める際にも、グループ全体で支え合えるメリットがあります。
持合株式のメリット
● 経営の安定性が高まる
主要株主が固定化されるため、外部の影響で経営が揺らぎにくくなります。
● 取引関係が長期的に継続しやすい
取引先との関係が強まり、安定したビジネス基盤を築きやすくなります。
● グループ戦略を進めやすい
資本面での結びつきがあると、提携や共同事業を進めやすくなります。
持合株式の課題・デメリット
● 株式市場の流動性を低下させる
企業同士で株を持ち合うと、市場に出回る株式が減り「自由に売買できる株」が少なくなります。
その結果、市場の透明性や健全性が低下する可能性があります。
● 経営の緊張感が薄れやすい
「安定株主がいるから安心」という心理が働き、ガバナンスが弱まる場合があります。
● 景気悪化時のリスク増大
バブル崩壊後、多くの企業が株価下落の影響を受け、保有株式の評価損が問題になりました。
持合株式のデメリットが顕在化した時期でもあります。
持合株式が増えた背景と、その後の動向
かつて持合株式が広がった背景には、外国資本の日本への参入がありました。
企業は外部からの買収を防ぐため、グループ内や取引先と株を持ち合うことで「防衛網」を築いたのです。
しかし、バブル崩壊後に株価が大きく下落すると、持合株式を大量に保有していた金融機関や企業に巨額の評価損が発生。
結果として、1990年代〜2000年代にかけて多くの企業が持合株式を解消し、比率は大きく減少しました。
まとめ:持合株式は“経営安定”と“市場健全性”のバランスが鍵
持合株式は「経営の安定」や「取引関係の維持」という大きなメリットがある一方、市場の流動性低下やガバナンスの弱体化といった課題も存在します。
現在では、過度な持ち合いは減少しましたが、戦略的な資本提携や長期的な協力関係を築く手段として、限定的に活用され続けています。
こちらもご覧ください

