総合償却(そうごうしょうきゃく)とは、複数の固定資産をグループとしてまとめ、一括して減価償却を行う方法のことです。
通常の減価償却は「資産ごと」に耐用年数を設定して計算しますが、大規模な機械設備や生産ラインのように細かな個別管理が難しいケースでは、この総合償却が活用されます。
この記事では、総合償却のしくみ、メリット、対象となる資産、具体例まで専門家が丁寧に解説します。
総合償却とは?基本的な考え方
総合償却は、グループ化された複数の固定資産をまとめて償却する制度です。
● なぜ総合償却が必要なのか?
通常の減価償却では、1つの固定資産につき
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取得価額
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法定耐用年数
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償却方法(定額法、定率法など)
を基に計算します。
しかし、工場設備のように資産点数が非常に多い場合、個別管理が極めて煩雑になります。
そこで認められているのが「総合償却」です。
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資産を一つずつ管理する負担を軽減
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生産ラインのように一体で稼働する資産をまとめて処理できる
という合理的なメリットがあります。
総合償却が適用される資産の例
総合償却は、主に 一体で稼働する機械装置・設備 に対して用いられます。
● 具体例
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工場の生産ライン一式
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製造設備を構成する多数の機械
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同じ目的でまとめて使用される設備群
例えば、生産ラインが「成形機・搬送機・検査設備・包装機」で構成されている場合、個々の耐用年数を細かく管理するより、“ライン全体で一つの資産” として償却した方が現実に適した処理になります。
総合償却のポイント:同じ機械でも耐用年数が異なることがある
総合償却の特徴として、
● 「同じ機械でも、役割が異なれば耐用年数も異なる」
という点があります。
例えば、同じモデルのコンプレッサーであっても
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生産ラインの主要工程で使用される場合
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補助工程で稼働時間が少ない場合
では、実際の消耗度が違うため、個別償却をするなら耐用年数も変わる可能性があります。
しかし総合償却なら、グループ全体として平均耐用年数を算出し、まとめて償却します。
総合償却の計算方法:平均耐用年数で一括償却
総合償却を採用する場合、グループ内の固定資産の平均耐用年数を用いて減価償却費を計算します。
計算の流れ
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グループに含まれる資産の取得価額を合計
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各資産の耐用年数を基に平均耐用年数を算定
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合計取得価額 ÷ 平均耐用年数 で償却費を計算
このように、資産ごとではなくグループ全体で償却額を算定するため、管理負担が大幅に軽減されます。
総合償却のメリット
1. 固定資産管理がシンプルになる
大量の機械・設備を個別に管理する必要がなくなるため、実務負担が大幅に減ります。
2. 生産ラインなど「一体で動く」資産に適している
現場の実態に沿った減価償却ができ、管理の整合性が高まります。
3. 長期的な設備投資でも計算が安定
平均耐用年数を使うことで、償却費が過度にブレることを防げます。
総合償却はどんな企業で使われる?
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製造業(工場を保有している企業)
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大規模な設備投資が多い企業
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多数の機械装置を一体で稼働させる業種
など、設備の点数が多い企業で特にメリットがあります。
まとめ:総合償却は生産ラインを一括管理するための合理的な制度
最後にポイントを整理します。
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総合償却とは、複数の固定資産をグループ化し、一括で減価償却する方法
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生産ラインや大規模機械設備など、個別管理が難しい資産が対象
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耐用年数はグループの平均値を用いる
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実務負担が大きく軽減され、現場の実態に沿った償却ができる
総合償却は、製造業など大規模設備を持つ企業にとって非常に有効な制度です。
固定資産の管理方法を見直したい企業や、減価償却の効率化を図りたい場合には、総合償却の適用を検討する価値があります。
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