会社が解散するときに必ず作成しなければならないのが「清算貸借対照表」です。
普段の決算書とは目的も内容も異なるため、初めて清算業務に携わる方は戸惑いやすいポイントでもあります。
この記事では、清算貸借対照表の意味、作成義務、評価方法、通常の貸借対照表との違いを、会計の専門家として分かりやすく解説します。
会社解散時の実務の流れを理解するうえで、ぜひ参考にしてください。
清算貸借対照表とは?
清算貸借対照表とは、会社が解散して清算手続きに入った際、清算人が作成する貸借対照表のことです。
清算株式会社が作成すべき「計算書類」の一つで、解散日現在の財政状態を示します。
ポイントは次のとおりです。
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株主総会で解散が決議されると、清算人は
①財産目録
②清算貸借対照表
の2つを解散日現在で作成する必要がある -
財産目録をもとに作られる
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清算後に会社が事業活動を行わない前提で作成される
清算手続きは会社の財産を売却・整理し、債務を弁済するための作業です。
そのスタート地点となるのが「清算貸借対照表」といえます。
清算貸借対照表が必要となる理由
通常の貸借対照表(決算書)は継続企業を前提にしていますが、清算の場合は前提が異なります。
清算貸借対照表が求められる理由は、
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解散時点で会社が保有する財産を明確にするため
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債権者に対して会社の財政状態を説明するため
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清算に必要な売却・弁済計画の根拠となるため
といったものが挙げられます。
会社が通常の営業活動を行わない以上、保有資産の「売却可能価値」が重要となるため、通常決算とは違った基準で評価されます。
清算貸借対照表の評価方法(売却時価で評価)
清算貸借対照表の大きな特徴は、資産を「売却時価(時価)」で評価する点にあります。
通常の決算では、「取得原価主義(購入時の価額)」で評価するのが一般的です。
しかし、清算会社は事業を続けないため、資産を将来利用する前提がありません。
したがって、清算手続きで実際に現金化する際の見込み価額=売却時価で評価する必要があります。
例:
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建物等 ⇒ 清算時に売却した場合の見込み価格で評価
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在庫 ⇒ 販売可能な見積価格で評価
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投資有価証券 ⇒ 市場価格で評価
このように、「実際に換金する場合の価値」を基準として作成されるのが清算貸借対照表です。
清算貸借対照表の構成
清算貸借対照表は、資産・負債・純資産の3区分で構成されます。
1. 資産の部
現金・売掛金・在庫・固定資産など、会社が清算時点で保有する財産を売却時価で表示します。
細かい項目ごとの内訳を示すことが求められます。
2. 負債の部
買掛金・借入金・未払費用など、会社が解散時点で抱えている債務を明確にします。
3. 純資産の部
純資産については、「資本金」「利益剰余金」などに区分せず、単一項目として表示します。
これは、清算会社では事業継続を前提とした資本区分の意味がなくなるためです。
清算貸借対照表と通常の貸借対照表の違い
| 項目 | 清算貸借対照表 | 通常の貸借対照表 |
|---|---|---|
| 評価基準 | 売却時価(時価) | 取得原価が基本 |
| 目的 | 清算のための換金・債務弁済の把握 | 継続企業の財政状態の把握 |
| 純資産の表示 | 区分せず一括表示 | 「資本金」「剰余金」など区分 |
| 前提 | 会社は事業を継続しない | 会社は継続して事業を行う |
このように、評価基準・目的・純資産の扱いが大きく異なる点が理解のポイントです。
清算手続きにおける実務の流れ(イメージ)
会社を解散して清算に入ると、一般的には次のような流れになります。
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株主総会で解散決議
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清算人を選任
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解散日現在の財産目録・清算貸借対照表を作成
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債権者への通知・公告
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資産の売却、債務の弁済
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残余財産の分配
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清算結了の登記
清算貸借対照表はSTEP3で作成される、非常に重要な書類です。
まとめ|清算貸借対照表は「清算のスタート地点」を示す重要書類
清算貸借対照表は、会社の解散時に清算人が作成しなければならない重要な計算書類です。
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解散日現在の財産状況を示す
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資産は売却時価で評価する
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純資産は区分せず一括表示
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財産目録をベースに作成する
これらを押さえておけば、清算実務における基本を理解できます。
清算業務は通常の会計処理とは異なる点が多いため、早めに準備し、正確な資料作成を心がけてください。
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