ART

ART(代替的リスク移転)とは?保険ではカバーしきれないリスクを移転する新しい手法を解説

企業のリスクマネジメントの分野で「ART」という言葉を聞いたことはありませんか?
保険の専門家や経営企画部門、リスク管理部門の方が注目する仕組みですが、言葉だけではわかりにくいですよね。

この記事では**「ARTとは何か」「仕組み」「具体例」「キャプティブや証券化との関係」**を、初心者にもわかりやすく解説します。

✅ ARTとは?

ARTは 「Alternative Risk Transfer(代替的リスク移転)」 の略です。
日本語では「代替的リスク移転」と訳されます。

✅ 一言でいうと
「従来の保険だけでは移転できないリスクを、保険以外の仕組みや金融技術を使って移転する方法」

✅ なぜ「代替的」なのか?

企業が抱えるリスクは多様化・巨大化しています。
たとえば、

  • 巨大自然災害による莫大な損失

  • パンデミックによる操業停止

  • 市場の急激な変動

こうしたリスクは、従来の保険商品だけでは

✅ そもそも保険で引き受けてもらえない
✅ 引き受けても保険料が非常に高額

などの問題があります。

ARTは、これらを「代替的な手段」で移転する仕組みを指します。

✅ ARTの主な手段・仕組み

ARTは多様な仕組みがあります。代表的なものを紹介します。

① 新しいタイプの保険商品

  • 伝統的な「火災保険」「賠償責任保険」などでは扱えない範囲をカバー

  • 例:特定の気象条件に応じた保険(パラメトリック保険)

✅ 事例

「台風の風速が一定以上になったら保険金が出る」など、実損害ではなく指標で支払額を決める。

② 保険の証券化

  • 保険リスクを資本市場に移転

  • 例:CATボンド(災害債券)

✅ 事例

大規模地震が起きた場合に保険会社が支払う巨額の保険金を、投資家から集めた資金でカバーする仕組み。

③ キャプティブ

  • 企業が自分のために設立する保険子会社

  • 目的:自社グループのリスクを引き受け、内部でコントロール

✅ 事例

大手製造業が自社グループの火災や製品責任リスクをキャプティブで管理。

✅ ARTのメリット

✅ 従来の保険市場がカバーしきれないリスクも移転可能
✅ 企業ごとのリスク特性にあわせた柔軟設計
✅ 資本市場の資金を活用して大規模リスクを分散

✅ ARTのデメリット・課題

⚠️ 仕組みが複雑で専門知識が必要
⚠️ 経済環境や市場状況によってコストが変動
⚠️ 規制や会計処理が国によって異なる場合

✅ こんな企業に使われています

  • グローバルに事業展開する大企業

  • 巨額の自然災害リスクを抱える電力会社、エネルギー会社

  • 大規模製造業(リコールリスク管理など)

  • 航空会社、海運会社(巨大損害リスク分散)

 

✅ まとめ

  • ART(Alternative Risk Transfer)とは
    伝統的な保険で移転できないリスクを、保険の枠を超えた手段で移転する仕組み

  • 主な方法

    • 新しいタイプの保険商品(パラメトリック保険など)

    • 保険の証券化(CATボンドなど)

    • キャプティブ(自社設立の保険子会社)

  • ポイント
    企業ごとのリスクに合わせてカスタマイズし、資本市場も活用できる

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