ROEとROAとは

ROEとROAとは?違い・目安・分析方法をわかりやすく解説

企業の収益性を測る重要な指標として「ROE(自己資本利益率)」と「ROA(総資産利益率)」があります。
どちらも「どれだけ効率的に利益を生み出しているか」を示す数値ですが、計算の基準となる資本の範囲が異なるため、意味するところも変わってきます。

この記事では、ROEとROAの違い・計算方法・分析のポイント・改善のヒントを、会計の専門家がわかりやすく解説します。

🧮 ROEとは?(自己資本利益率)

ROE(Return on Equity)とは、自己資本に対してどれだけの利益を上げているかを表す指標です。
投資家が企業の収益性を判断するうえで最も注目する指標の一つです。

計算式:

ROE(%)= 当期純利益 ÷ 自己資本 × 100

✅ ROEでわかること

ROEが高いほど、少ない自己資本で多くの利益を上げている=効率的な経営ができていると判断されます。
投資家はこの数値を見て「資金を効率よく運用している企業かどうか」を見極めます。

📊 ROEの目安(平均値)

経済産業省の統計によると、業種全体の平均ROEは約9.7%(2021年度)です。
一般的には8〜10%以上で優良企業
とされますが、業種による違いも大きいため、同業他社と比較することが重要です。

業種 ROE(%)
卸売業 13.1
情報通信業 12.6
製造業 9.8
小売業 7.5
飲食サービス業 5.1

(出典:経済産業省「企業活動基本調査速報(2021年度)」)

💡 ROEを改善する方法

ROEを高めるには、以下の2つのアプローチがあります。

  1. 当期純利益を増やす(売上増・コスト削減)

  2. 自己資本を減らす(不要資産・在庫の圧縮)

つまり、「効率的に利益を生み出す経営構造」と「スリムな資本構成」の両立が重要です。

🧾 ROAとは?(総資産利益率)

ROA(Return on Assets)は、企業が持つすべての資産に対してどれだけの利益を上げたかを示す指標です。
投資家だけでなく、銀行などの金融機関や取引先も注目します。

計算式:

ROA(%)= 当期純利益 ÷ 総資産 × 100

✅ ROAでわかること

ROAが高いほど、企業が保有する資産を有効に活用していることを意味します。
「総資産全体に対する収益性」を示すため、経営の効率性を評価する際に役立ちます。

📊 ROAの目安(平均値)

業種全体の平均は約4.1%です。ROAは資産規模や事業モデルにより差が出やすいため、単純比較は避けましょう。

業種 ROA(%)
情報通信業 6.4
卸売業 5.1
製造業 5.0
小売業 3.3
飲食サービス業 2.0

(出典:経済産業省「企業活動基本調査速報(2021年度)」)

💡 ROAを改善する方法

ROAを高めるには、次の2点が有効です。

  1. 当期純利益を増やす(利益率改善・コスト削減)

  2. 総資産を減らす(在庫・固定資産・投資の見直し)

資産の効率的な運用や、過剰な設備投資の抑制などがポイントです。

⚖️ ROEとROAの違い

比較項目 ROE ROA
指標名 自己資本利益率 総資産利益率
分母 自己資本(返済不要) 総資産(借入含む)
主な関心者 投資家 経営者・金融機関
意味 出資金に対するリターン 全資産の運用効率

ROEは「投資家目線」の指標、ROAは「経営効率」を見るための指標です。
ROEが高くてもROAが低い場合、借入金に依存したリスクの高い経営をしている可能性もあります。
したがって、両方の指標を併せて分析することが重要です。

📈 企業分析におけるROE・ROA活用のコツ

  • ROEで「投資効率」を評価

  • ROAで「経営効率」を確認

  • 同業他社・過去との比較でトレンドを分析

たとえば、ROEが上昇していてもROAが横ばいなら、「借入増加による一時的な利益率向上」の可能性があります。
その場合は財務リスクも合わせてチェックしましょう。

🧭 まとめ:ROEとROAを正しく理解し、企業分析に活かそう

ROEとROAはどちらも「企業がどれだけ効率よく利益を上げているか」を示す重要な指標です。
ただし、ROEは自己資本ベース、ROAは総資産ベースであるため、分析の視点が異なります。

両方の数値をバランスよく把握することで、企業の「収益性」と「効率性」の両面をより正確に判断できるでしょう。

さらに参照してください:

借入金融とは?企業が資金を調達する代表的な方法をわかりやすく解説