こんにちは。5年以上にわたって企業会計・個人事業主の会計処理・税務申告に携わってきた会計専門家として、また「検索で見つかりやすい記事」を書くウェブライターとして、本日は「関連当事者」について、初心者の方にもわかりやすく丁寧に整理してお伝えいたします。
企業の取引先や役員関係の整理、そして財務諸表の開示義務など、知っておくと安心なポイントを具体例付きで解説します。まずはこのキーワードを押さえておきましょう:
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関連当事者の範囲
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関連当事者取引とは何か
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開示が必要な取引・開示不要な取引
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実務で注意すべき点
それでは順に見ていきましょう。
1.関連当事者とは
「関連当事者」とは、簡単に言えば「会社にとって特別な関係にある相手」=会社の意思決定や財務・事業方針に影響を及ぼしうる立場にある人や会社のことです。
会計基準上もしっかり定められており、例えば以下のような人・会社が該当します。
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親会社/子会社/兄弟会社などグループ会社の関係
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会社の「主要株主」およびその近親者
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会社の役員(取締役・監査役・会計参与・執行役など)およびその近親者
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その他「経営・財務・事業の方針決定」に重要な影響を持つ会社や、議決権の過半数を所有している会社等
例えば、ある会社Aが50 %の議決権を持つ会社Bと取引をしている場合、会社BはAの関連当事者に該当する可能性があります。
このような関係があると、取引条件が通常の第三者取引と異なる可能性が出てくるため、透明性確保の観点から開示義務が生じます。
2.関連当事者の主な範囲(わかりやすく)
関連当事者の範囲を理解するため、「主要株主」「役員と近親者」「関連会社」の3つを具体的に説明します。
・主要株主
会社の議決権を 10%以上 保有している株主を「主要株主」として扱うことがあります。信託財産として株式を保有する信託業等の場合、主要株主とみなされないケースもあります。
たとえば、会社Cの議決権のうち株主Dが12%を保有していれば、DはCの関連当事者の範囲に入る可能性があります。
・役員と近親者
役員とは、取締役・監査役・会計参与・執行役など、またそれらに準ずる者も含まれます。さらにその「二親等以内の親族」も関連当事者の範囲に含まれます。
実務では、「顧問に就いている元役員だけれど、実質的に影響力を持っている」というケースでも関連当事者と判断されることがあるため、形式だけでなく実質を確認することが重要です。
・関連会社
「関連会社」とは、ある会社の経営に重要な影響を与えている他の会社を指します。一般的には議決権20%以上保有しているケースが多いですが、15%以上でも「重要な影響を与えている事実がある」と判断された場合には関連会社とされることがあります。
たとえば、会社Eが会社Fの議決権を18%保有しているが、さらにFの役員をEが送り込んでいる、FからEへ重要な販売ルートを提供している、という場合には、FがEの関連会社となる可能性があります。
3.関連当事者取引とは?なぜ重要か
「関連当事者取引」とは、会社とその関連当事者との間で行われる取引のことを言います。会計基準では、対価の有無を問わず、資源の移転・債務の移転・役務の提供が該当すると定められています。
なぜ重要か?
取引条件が “一般の第三者間取引” と比べて恣意的になるケースがあるため、他の株主や利害関係者の立場から見て不利になる可能性があります。例えば、安く仕入れて高く売る、または部外者にはありえない優遇条件で貸付をする、など。
こうした背景から、財務諸表の利用者(株主・投資家・債権者等)が会社の実態を正しく把握できるよう、開示義務があるわけです。
典型的な取引例
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会社が関連当事者に不動産を非常に低い賃料で貸す
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会社が役員の近親者に無利子または低利率で貸付を行う
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会社が関連会社に対して通常より高い価格で仕入れを行っている
これらは「取引条件が一般的なものと異なる可能性がある」ため、関連当事者取引として注意が必要です。
4.開示対象となる取引・開示不要な取引
関連当事者取引の中でも、すべてが開示対象というわけではなく、「重要性」や「取引条件」がポイントになります。
◎ 開示対象となる主な取引
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無償取引や低廉な価格での取引(対価が時価と比して著しく低いなど)
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形式的・名目的には第三者との取引に見えるが、実質は関連当事者間の取引であるもの
✖ 開示不要となる主な取引
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取引条件が一般の第三者間取引と同等であることが明らかなもの(例:公開増資、公募増資など)
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役員への報酬・賞与・退職慰労金の支払い(ただし、別途注記義務がある場合も)
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連結財務諸表作成時に相殺消去された取引(連結ベースで影響がないと判断されるもの)
実務上、「この取引は開示すべきか?」という判断には、以下のような視点が必要です:
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取引条件が一般的かどうか(時価・独立第三者条件との比較)
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その取引が会社の財務状況・経営成績に与える影響が「重要」かどうか(重要性の判定)
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実質的に関連当事者との取引かどうか(名目を超えて実態を見る)
5.実務で注意すべきポイントと事例
実務の現場で「関連当事者」「関連当事者取引」の整理を誤ると、監査上・税務上・IR(投資家向け情報)上トラブルになることもあります。ここでは“初心者”でも理解しやすい事例とともに、注意点を整理します。
事例①:役員の近親者への貸付
例)会社Aが取締役Bの子Cに対して、無利子で貸付を行った。
→ この場合、B・Cとも関連当事者に該当する可能性があり、かつ無利子貸付なので一般の条件と異なる可能性があります。開示対象となるかを判断する必要があります。
注意点:
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近親者の範囲(二親等以内)が適用されるかを確認。
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貸付条件(利率・返済期限・担保有無)を一般の市場条件と比較。
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開示時には「この貸付は一般の第三者との取引ではない」「条件を〇〇とした理由」などを注記しておくと安心です。
事例②:兄弟会社への売買取引
例)会社Dと同じ親会社を持つ兄弟会社Eが、Dから商品を他社相場より10 %高く仕入れていた。
→ 兄弟会社=関連当事者の範囲に含まれる可能性があります。条件が不利側(Dが高く払っている)なら、経営成績に影響を及ぼす可能性あり。開示検討対象です。
注意点:
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兄弟会社というグループ関係を整理(親会社を介しているか)
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仕入価格が「市場価格平均」や「独立企業間価格」と比べてどれだけ乖離しているかを確認。
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内部統制として、関連当事者との取引がどのように承認・監督されているかを明文化しておくと、監査対応もスムーズです。
事例③:連結子会社との資金移動
例)親会社Fが子会社Gに対して、グループ内部で資金を移動(貸付・保証など)している。
→ 連結財務諸表を作成している場合、相殺消去されていても単体の注記義務がある場合があります。
注意点:
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どの財務諸表(個別/連結)で開示義務があるかを確認。
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グループ内取引であっても「一般の取引条件と同様」と判断されない場合は注記 対象。
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内部監査・監査法人との事前チェックが重要です。
6.まとめ:なぜ「関連当事者」を押さえておくべきか?
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関連当事者との取引は、会社の外部から見ると「特別な優遇・不利が入り得る」可能性がある。
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上場企業・IPOを目指す会社では、特に関連当事者取引の整理が審査項目となることが多い。
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中小企業・非上場企業であっても、会計・税務・監査・銀行取引の観点から、事前に関連当事者の整理をしておくことで、後々のトラブル予防になります。
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財務諸表の注記義務もあるため、経理・財務担当者は「関連当事者の範囲」「該当する取引条件」「開示判断」を日常業務で確認できる体制を作ることが望まれます。
さらに参照してください:

