「アーンド(インカード)ベイシス損害率」という言葉は、損害保険の専門用語の中でも、初めて聞くとわかりにくいもののひとつです。
しかし、損害保険会社の収支管理や料率設定に欠かせない重要な概念です。
この記事では、アーンド(インカード)ベイシス損害率の意味、計算方法、他の損害率との違い、具体的なイメージを、初心者の方にもわかりやすく解説します。
✅ アーンド(インカード)ベイシス損害率とは?
期間中の発生損害額を、既経過保険料で割って算出する損害率です。
英語では「incurred to earned basis loss ratio」と呼ばれます。
保険会社は、保険契約によって得た保険料と、支払う保険金のバランスを分析することで、保険料率(掛け金の水準)を適正に設定します。
その際、実際に「どれくらいの損害が発生したか」を把握するための指標が、このアーンド(インカード)ベイシス損害率です。
✅ 用語のポイント解説
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発生損害額(incurred losses)
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期間中に実際に発生した事故などによる支払い見込みの保険金総額
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すでに支払った金額+将来支払う見込みの未払い分を含む
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既経過保険料(earned premiums)
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その期間中に、保険会社が保険責任を負った保険料
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例:1年契約のうち半年経過したら、その半年分が「既経過」
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✅ アーンド(インカード)ベイシス損害率の計算式
アーンド(インカード)ベイシス損害率=発生損害額既経過保険料\text{アーンド(インカード)ベイシス損害率} = \frac{\text{発生損害額}}{\text{既経過保険料}}
🏷️ 具体的なイメージ
たとえば:
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1年間の既経過保険料:10億円
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期間中に発生した事故による損害額:6億円
6億円10億円=60%\frac{6億円}{10億円} = 60\%
この場合、アーンド(インカード)ベイシス損害率は「60%」です。
つまり、保険料収入のうち60%相当分が事故による支払いに充てられる見込みということになります。
✅ 何のために使うの?
アーンド(インカード)ベイシス損害率は、保険会社が以下を把握するために使われます。
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保険料率が適正かを評価
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事故発生リスクと保険料収入のバランスを管理
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収支の健全性を確認
損害率が高すぎると保険会社の収支が赤字になり、逆に低すぎると加入者が不公平に高い保険料を負担する可能性があるため、非常に重要な指標です。
✅ 他の損害率との違い|リトン(ペイド)・ベイシス損害率
損害率の算出方法にはもう一つ代表的なものがあります。
✔️ リトン(ペイド)・ベイシス損害率(written basis loss ratio)
期間中の「支払い済み保険金」を「収入保険料」で割って算出。
✅ 特徴
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「支払った金額」ベースで計算
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発生はしていても未払いの損害(未払金)は含まれない
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短期的には低く見えることも
✅ 比較表
損害率の種類 | 分子 | 分母 | 特徴 |
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アーンド(インカード)ベイシス損害率 | 発生損害額(支払+未払見込み) | 既経過保険料 | 将来支払うべき損害も反映する、より正確な評価 |
リトン(ペイド)・ベイシス損害率 | 支払い済み保険金 | 収入保険料 | 実際に払った金額だけ反映、現金主義的 |
🏷️ 使い分けのポイント
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アーンド(インカード)ベイシス損害率
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保険責任期間に対応
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期間中に発生した全損害を計上
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収支の実質的な健全性を把握するのに適する
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リトン(ペイド)・ベイシス損害率
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直近のキャッシュフロー把握に便利
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短期的な資金繰り管理などに活用
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✅ まとめ
「アーンド(インカード)ベイシス損害率」は、保険会社が保険料率の適正化や収支管理をする上で非常に重要な指標です。
期間中に発生した損害額を、既経過保険料で割ることで、将来的な支払いも含めた保険の「真のリスク」を評価します。
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