企業の合併や買収(M&A)を行う際、「パーチェス法」という会計処理方法がよく使われます。
一見専門的な言葉に感じますが、実は企業会計を理解するうえでとても重要な考え方です。
この記事では、パーチェス法の意味・仕組み・会計処理の流れ・のれんとの関係まで、初心者にもわかりやすく解説します。
パーチェス法とは?基本の考え方
「パーチェス法(Purchase Method)」とは、企業結合において、買収する企業が他社の資産や負債を“購入する”という考え方に基づく会計処理方法です。
つまり、合併や買収を「事業の一括購入」とみなし、被買収企業の資産・負債を**公正価値(時価)**で再評価して引き継ぐのが特徴です。
パーチェス法を採用すると、
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被買収企業の純資産の時価
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実際に支払った買収対価
この2つの差額が「のれん(Goodwill)」として計上されます。
パーチェス法による会計処理の仕組み
実際の会計処理を、簡単な例で見てみましょう。
例:
ある企業Aが企業Bを1億円で買収したとします。
B社の純資産(時価評価)は8,000万円でした。
この差額2,000万円が「のれん」として計上されます。
のれんは将来的な利益を生む無形資産とみなされ、定期的に減損テストや償却処理が行われます。
パーチェス法のメリット・デメリット
メリット
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企業結合の実態(時価ベース)を反映できる
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企業価値の正確な把握が可能
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国際会計基準(IFRS)に整合しており、グローバル対応が容易
デメリット
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のれんの計上により、将来の減損損失リスクが発生する
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被買収企業の資産評価を行う手続きが複雑で、会計処理コストが高い
持分プーリング法との違い
かつては「持分プーリング法(Pooling of Interests Method)」という別の方法も存在しました。
これは、合併を「対等な立場での統合」とみなし、資産や負債を簿価のまま引き継ぐという考え方です。
しかし、この方法では実際の取引価格が反映されないため、企業の経済実態が正しく見えないという問題がありました。
そのため、現在は国際会計基準(IFRS)でも日本基準でも、持分プーリング法は原則廃止され、パーチェス法が主流となっています。
日本と海外の会計基準における位置づけ
日本基準(企業会計基準第21号)
日本では、「企業結合会計基準」において、原則としてパーチェス法を採用することが定められています。
ただし、例外的に支配関係が変わらない内部再編の場合には、持分プーリング法的な処理(共通支配下の取引)も認められます。
国際会計基準(IFRS)
IFRSではパーチェス法の考え方を採用し、「取得法(Acquisition Method)」と呼ばれています。
アメリカのUS GAAPでも同様に、持分プーリング法は廃止され、パーチェス法に統一されています。
パーチェス法の適用で生じる「のれん」の扱い
パーチェス法では、先ほど説明した通り、買収金額と純資産の差額が「のれん」となります。
のれんは企業が持つブランド価値や顧客基盤など、目に見えない経済的利益を反映しています。
のれんの会計処理
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日本基準:20年以内の定額償却が原則
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IFRS:償却せず、毎期「減損テスト」で価値を確認
つまり、日本では費用配分、海外では価値評価という考え方の違いがあります。
まとめ:企業結合会計の主流は「パーチェス法」
パーチェス法は、企業結合を“事業の購入”として扱う会計処理方法です。
被買収企業の資産・負債を時価で再評価し、差額を「のれん」として認識する点が特徴です。
国際的にも標準的な方法であり、現在では日本でも原則的にパーチェス法が採用されています。
企業買収やM&Aを検討している場合は、
このパーチェス法の仕組みを理解しておくことで、財務への影響やのれんの管理方針を適切に判断できるようになります。
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