使途秘匿金とは

使途秘匿金とは?法人税・損金不算入・追加課税の仕組みをわかりやすく解説

企業会計や法人税の申告において、「使途秘匿金」という言葉を耳にしたことはありますか?
使途秘匿金は、法人が支出した金銭について相手方や支出理由を帳簿に記載していない場合に課税リスクが生じる重要な概念です。

本記事では、初心者にもわかりやすく、使途秘匿金の意味や課税の特例制度、使途不明金との違いについて解説します。

使途秘匿金とは?

使途秘匿金とは、法人が金銭や資産を支出したにもかかわらず、帳簿上に相手方の氏名・名称・住所・所在地、支出理由などが記載されていない支出のことを指します。
ポイントは以下の通りです。

  • 金銭の支出や資産の引渡しが対象(サービス提供は含まれません)

  • 帳簿に正当な記載がない場合に「使途秘匿金」とされる

  • 税法上は違法・不当支出につながる恐れがあるため、法人税で厳しく扱われます

 

使途秘匿金の課税特例

平成6年度の税制改正で、使途秘匿金に対する課税特例制度が創設されました。
具体的には、使途秘匿金がある場合は次のような課税措置が行われます。

  1. 損金不算入:全額が損金として認められず、法人税の課税対象となる

  2. 追加課税:使途秘匿金の支出額に対して40%の追加課税

  3. 法人住民税の課税:法人税だけでなく住民税も課税され、実効税率はほぼ100%に近くなる

これにより、帳簿上の記載漏れや不正な支出のリスクを強く抑制する仕組みとなっています。

使途秘匿金として追加課税されない場合

ただし、帳簿に相手方の氏名等が記載されていなくても、次の場合は使途秘匿金として扱われず、追加課税の対象になりません。

  1. 相当の理由がある場合

    • 不特定多数への広告宣伝用物品の贈答

    • 小口謝金

    • 災害などで帳簿が紛失した場合

  2. 支出の内容が明らかである場合

    • 資産の譲受けや取引の対価の支払い

  3. 税務署長が秘匿目的ではないと認めた場合

 

使途秘匿金と使途不明金の違い

似た概念として「使途不明金」がありますが、次の点で区別されます。

項目 使途秘匿金 使途不明金
支出内容の把握 不明(相手方・理由不記載) 支出額・支払先は判明
法人税上の扱い 損金不算入+追加課税の可能性 損金不算入のみ
リスク 重加算税の対象になることもある 過少税負担のリスクは限定的

つまり、使途秘匿金は帳簿の記載不備だけでなく、税務上の重い負担が課されるリスクがある点で使途不明金より重い扱いです。

まとめ

  • 使途秘匿金とは:帳簿に支出相手や理由が記載されていない法人の支出

  • 課税の特例:全額損金不算入+40%の追加課税+法人住民税

  • 非課税となるケース:広告宣伝費や災害など正当な理由がある場合

  • 使途不明金との違い:支出額や支払先は判明しているが費途が不明なもの

法人が支出する際は、帳簿の記載を正確に行い、使途秘匿金にならないよう管理することが重要です。特に交際費や機密費などの支出は、税務リスクを回避するために証拠書類の整備が不可欠です。

さらに参照してください:

所得割とは?個人住民税の仕組みと非課税基準をわかりやすく解説