自動車保険や海上保険の説明を読んでいると出てくる「全損(ぜんそん)」という言葉。
なんとなく「大きな損害」というイメージはあっても、具体的にどういう状態を指すのか、そしてどんな場合に全損と判断されるのかを正しく理解している人は少なくありません。
この記事では、保険の専門家として、全損の意味や判断基準、似た用語である「分損」との違いを、初心者でもわかりやすく解説します。
全損とは?
全損とは、保険の対象となっている物(例えば自動車)が、
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修理できないほど損傷している状態
または -
修理費用が、その車の時価額(市場での販売価格相当額)を上回る場合
を指します。
たとえば、同一車種・同年式の中古車が市場で150万円で取引されている場合に、事故による修理費が180万円かかるなら、修理するよりも買い替えたほうが合理的です。このとき保険会社は「全損」と判断します。
分損との違い
全損と対になる用語が**分損(ぶんそん)**です。
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分損:修理費が時価額を下回る場合
→ 修理費がそのまま損害額として計算される -
全損:修理費が時価額を上回る場合、または修理不能な場合
→ 時価額を基準に保険金が支払われる
つまり、分損は「直せる損害」、全損は「直すよりも買い替えたほうが合理的な損害」と覚えるとわかりやすいです。
全損になるケースの具体例(自動車保険)
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大きな事故で車体フレームが大破し、安全性が確保できない
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浸水被害によりエンジンや電気系統が深刻な損傷を受けた
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火災で車両の大部分が焼失した
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修理費が車の時価を大きく上回る
海上保険における全損
海上保険でも「全損」という用語は使われますが、意味は少し異なります。
例えば、船舶の沈没や火災などによって積み荷がすべて滅失した場合を全損といいます。
まとめ
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全損は修理不能、または修理費が時価額を超える状態
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対になる用語は分損(修理可能で時価額未満の損害)
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自動車保険では全損=買い替えのほうが合理的なケース
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海上保険では積み荷が全滅した場合も全損と呼ばれる
保険金の支払い額や手続きに大きく関わる用語なので、仕組みを理解しておくと安心です。
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