「誰かがケガをさせたけど、実際に誰のせいかはっきりしない…」
そんなケースで登場するのが**共同不法行為(きょうどうふほうこうい)**です。
この記事では、共同不法行為の意味、加害者の責任、民法の規定、実際の事例までを、保険や損害賠償に関心のある方にもわかりやすく解説します。
✅ 共同不法行為とは?一言で説明すると…
共同不法行為とは、複数の人が関与して他人に損害を与えた場合に適用される法律上の考え方です。
たとえば――
3人でイタズラをしていたら、人にケガをさせてしまった。でも、誰が実際にケガを負わせたかはっきりしない…
このようなケースでは、「誰が悪いか特定できないから責任は問えない」となってしまうと、被害者が救済されません。
そこで登場するのが「共同不法行為」のルールです。
✅ 民法719条に基づく規定
共同不法行為は、民法第719条に定められています。
数人が共同の不法行為によって他人に損害を加えたときは、連帯してその損害を賠償する責任を負う。
また、共同行為であるかどうか明らかでない場合でも、共同して加害行為を行ったと認められるときは、同様に責任を負う。
つまり、関与者の1人1人が、「全体の損害に対して全額責任を負う(連帯責任)」ことになります。
✅ 「一部実行・全部責任」の考え方
共同不法行為では、1人が全額を支払う責任を負う可能性があります。これは「一部実行・全部責任」と呼ばれます。
どうしてそんなルールになっているの?
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被害者を保護するため:責任の所在が曖昧でも、救済の道を残す。
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加害者間で後から調整できる:支払った人が他の加害者に**求償(負担の分担)**することが可能。
✅ 具体的な例:共同不法行為が認められるシチュエーション
🚴 例1:3人で自転車に乗りながら人にぶつかってケガをさせた
誰が直接ぶつかったかは明らかでないが、3人でふざけ合いながら走行していたなら、3人全員に連帯責任が生じる可能性があります。
🧯例2:数人で放火を計画し、実行したのは1人だった場合
放火を知りながら共謀していたのであれば、実際に火をつけたのが誰であっても、全員が共同不法行為者として責任を問われることがあります。
✅ 共同不法行為と類似する考え方との違い
概念 | 内容 | 連帯責任があるか |
---|---|---|
共同不法行為 | 数人が関与して他人に損害を与えた場合 | あり |
単独不法行為 | 単独で他人に損害を与えた場合 | なし(個人責任) |
使用者責任(民法715条) | 従業員の行為による損害に、雇用主も責任を負う場合 | あり(使用者と従業員) |
✅ 保険との関係:損害保険・賠償責任保険でカバーできる?
被害者に対する損害賠償義務は、賠償責任保険や個人賠償責任保険で一部カバーできることがあります。
ただし、共同不法行為が「故意による損害」である場合、保険金が支払われない可能性もあるため要注意です。
✅ まとめ:共同不法行為とは“連帯責任”のルールで被害者を守る仕組み
共同不法行為は、加害者の特定が困難な場合でも、被害者が泣き寝入りしないように設けられた法律上の救済ルールです。
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複数人が関与 → 誰が主犯でも 全員が連帯責任
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加害者間で責任割合を後から調整(求償)可能
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被害者保護を重視する制度設計
特に事故やイタズラ、共同作業中の損害など、**「誰か1人の責任では済まないケース」**では、この考え方が重要になります。
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