企業間の協力関係や業務提携が多様化する中で、「共同事業」という言葉を耳にする機会が増えています。
しかし、「共同事業とは具体的にどのような形態なのか」「税務上どのような取り扱いになるのか」については、実務で混乱しやすいポイントでもあります。
この記事では、日本の会計・税務の専門家の視点から、共同事業の基本的な考え方と、適格組織再編との関係、税務上の注意点を初心者にもわかりやすく解説します。
共同事業とは?
共同事業とは、複数の会社(法人や個人事業主など)が共同で事業を行う形態を指します。
たとえば、新製品の開発を共同で行うために複数社が出資したり、販売・物流などの一部機能を共同運営するケースなどが典型です。
特に、企業再編(合併・分割・株式交換など)を通じて共同事業を行う場合、一定の条件を満たすと「適格組織再編」として課税の繰延が認められることがあります。
これは、税務上の大きなメリットとなるため、企業再編を行う際の重要な判断基準になります。
適格組織再編における「共同事業」の定義
税法上、「共同事業」と認められるためには、いくつかの判定要件を満たす必要があります。
以下では、その代表的な5つの要件をわかりやすく整理します。
1. 事業関連性要件
まず、再編を行う企業同士の事業内容に関連性があることが求められます。
例えば、製造会社と販売会社の統合のように、事業の連携が明確であればこの要件を満たします。
2. 事業比率要件または経営参画要件
共同事業における各社の事業規模(売上や従業員数など)の比率がおおむね1:5以内であることが「事業比率要件」です。
または、各社の経営層(社長、副社長、専務、常務などの「特定役員」)が共同で事業運営に参画している場合も認められます。
このいずれかを満たせばOKです。
3. 独立事業単位要件
再編時に、分割事業の主要な資産や負債が新会社へ引き継がれることが条件です。
単なる契約上の移転ではなく、事業の実体が伴う必要があります。
4. 事業継続要件
共同事業によって移転された事業が、再編後も継続して運営される見込みがあること。
短期間で廃止されるような再編は、適格扱いにならない可能性があります。
5. 株式継続保有要件
再編によって取得した株式を継続保有することが原則です。
ただし、合併や分割型分割で移転法人の株主が50人以上いる場合は、この要件は不要とされています。
共同事業における課税の取り扱い
共同事業を行う場合、各共同事業者は連帯納税義務を負います。
つまり、共同事業で発生した所得に関して、各社が責任を持って納税しなければなりません。
一方で、消費税の免税点などを判断する際には、共同事業の損益分配割合(または出資割合)に応じて、次のように按分します。
各共同事業者の事業所面積または従業員数
= 共同事業全体の数値 × 損益分配割合
この考え方は、課税基準を算定する際にも同様に適用されます。
まとめ:共同事業を行う際のポイント
共同事業は、企業の強みを掛け合わせて新しい価値を生み出す有効な手段ですが、
税務面では「適格組織再編」として認められるかどうかが重要な分岐点となります。
そのためには、
-
事業の関連性
-
経営参画や出資比率
-
事業の継続性
などの要件を事前に満たしておく必要があります。
企業再編や共同事業の設計を行う際は、会計士や税理士など専門家と連携しながら慎重に進めることが大切です。
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