企業会計や財務管理において「再調達時価(再調達原価)」という言葉を目にすることがあります。これは、ある資産を同じ条件で再取得する場合に必要となる予想購入額を指す概念で、特に棚卸資産や固定資産の評価で重要です。
この記事では、再調達時価の基本的な考え方、計算方法、適用シーン、そして棚卸資産評価や災害保険での利用についてわかりやすく解説します。
再調達時価とは
再調達時価とは、簡単に言うと「同じ資産を新たに購入するならどのくらい費用がかかるか」を示した金額です。
棚卸資産や固定資産を評価する際に参考にされ、取得費だけでなく送料や手数料、保管費などの付随費用も加算して計算します。
例えば、製造業で使用する原材料を再度購入する場合、過去の取得価格ではなく、現時点で同じ品質・数量を購入する際の金額を基準とするのが再調達時価です。
再調達時価と正味売却価額の違い
棚卸資産を評価する場合、一般的には「正味売却価額(Net Realizable Value)」を用いることが多いです。これは、実際に販売できる予想価格から販売コストを差し引いた金額です。
しかし、次のような場合は再調達時価を用いる方が適切です。
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正味売却価額の観察が困難な場合
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資産の価値が再取得コストにほぼ比例して変動する場合(例:原材料や消耗品)
この場合、再調達原価を棚卸資産の評価基準として継続的に適用することが認められています。
再調達時価の計算方法
再調達時価を計算する際には、以下の費用を合算します。
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資産の購入価格
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配送料や輸送費
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手数料や関税
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保管・管理費
このように資産を再取得するのに必要な全コストを考慮するのがポイントです。
再調達時価の活用シーン
1. 棚卸資産評価
製造業の原材料や消耗品などは、再調達原価を用いることで、資産の価値をより正確に把握できます。正味売却価額とほぼ比例して変動する場合には、再調達原価の方が実務上便利です。
2. 固定資産の災害保険評価
建物や機械などの固定資産に対する保険では、再調達時価を基準として評価されることがあります。同一構造・同一能力・同用途の資産を再取得する際の金額が算出され、保険金額の設定に利用されます。
再調達時価を理解するメリット
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資産の評価額を現実的に把握できる
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棚卸資産や固定資産の財務情報が正確になる
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災害や事故などによる資産損失時の保険金算定に役立つ
まとめ
再調達時価は、企業会計において資産を現実的な価値で評価するための重要な概念です。
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棚卸資産:原材料や消耗品の価値を正確に把握
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固定資産:災害保険評価や資産再取得コストの算定
取得費や付随費用を含めた再調達コストを正しく計算することで、財務情報の信頼性を高め、経営判断や資金計画にも役立てることができます。
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