出資金とは

出資金とは?仕組み、メリット・デメリット、返済義務、会計処理までわかりやすく解説

起業や事業の資金調達について調べていると必ず登場する言葉が「出資金」です。
何となく理解しているつもりでも、融資との違い、リスク、返済の要否など、細かい部分は意外と曖昧になりがちです。

この記事では、会計・税務の実務経験を踏まえて、出資金の基本からメリット・デメリット、会計処理のポイントまで、初心者でも理解できるように整理して解説します。

出資金とは?

出資金とは、事業や組織の運営のために、出資者が拠出する資金のことです。
出資を受けたお金は返済義務がなく、事業の原資として自由に活用できます。その一方で、出資者には配当や議決権といった権利を付与する必要があり、単純な「もらえるお金」とも言えません。

出資金の仕組みは、受ける主体によって少し変わるため、以下の2つに分けて理解するとスムーズです。

株式会社の出資金

株式会社の場合、出資金は株式を引き受ける際に払う資金を指します。
払い込まれた金額のうち、会社が資本金として計上する額は会社が決めることができます。

ポイントはここです。

・出資額に応じて株式が割り当てられる
・株式数に応じて議決権が与えられる
・利益が出れば配当を受け取れる

つまり、”会社の一部を買う”イメージに近い仕組みです。

協同組合の出資金

協同組合では、組合員が活動目的のために拠出する資金を出資金と呼びます。
株式会社のように投資的な性格が強いわけではなく、「助け合いの仕組みを支える資金」に近いものです。

特徴としては以下のとおり。

・出資額に関係なく1人1票の議決権
・利益配当よりも組合活動の維持が目的
・組合を脱退するときに出資が返還されるケースが多い

株式会社とは考え方がかなり異なる点がポイントです。

出資と融資・投資の違い

よく混同される3つの資金提供方法ですが、性質は大きく異なります。

・出資
返済不要。配当や議決権が発生する。

・融資
返済が必須で、利息も必要。返済しないと債務不履行になる。

・投資
広義では「出資」を含む言葉。株式購入などが代表的。

起業時の資金調達を考える際は、この違いを理解しておくと判断がしやすくなります。

出資金のメリット

出資を受ける側のメリット:返済義務がない

出資金は返済の必要がありません。そのため、融資のように返済スケジュールに追われることがありません。資金繰りに余裕が生まれるため、会社にとっては大きなメリットです。

出資する側のメリット:配当が受け取れる

出資者は株式保有により配当を受け取れる可能性があります。
事業が順調で利益が出れば、多くの配当が受け取れる仕組みです。

出資金のデメリット

出資を受ける側のデメリット:経営介入リスク

出資者は議決権を持つため、経営に意見を出せる立場になります。
もし経営者より大きな持分を持つ出資者が表れれば、意思決定の主導権が奪われる可能性もあります。

出資する側のデメリット:元本回収リスク

事業が失敗した場合、配当が得られないだけでなく、出資金自体が戻らないケースもあります。
投資性が高いという点は理解しておく必要があります。

出資金を受ける方法

出資を受ける場面は大きく2つです。

・会社設立時
・増資したいとき

会社設立時には発起人が出資内容を決め、出資者は銀行への払込みを行います。
増資の場合は、新株発行や第三者割当増資などの手続きを行います。

現金のほかに、不動産や有価証券を出資する「現物出資」も可能です。

出資金の会計処理

会社が設立された場合、以下の科目で処理します。

・出資された金額のうち資本金とした部分 → 資本金
・資本金にしなかった部分 → 資本準備金

仕訳例(現金で300万円出資を受け、そのうち100万円を資本金に計上する場合)

(借方)現金 300万円
(貸方)資本金 100万円
(貸方)資本準備金 200万円

出資金は返済が必要になることもある?

原則、出資金は返済不要ですが、例外があります。

・組合脱退時
・会社が株式買取請求に応じる場合
・会社解散時の残余財産分配

ただし、株式会社では基本的に任意のタイミングで返還はできません。法律上、資本維持の原則があるためです。

出資金以外の資金調達方法

事業の状況に応じて、以下の方法も検討できます。

・銀行融資
・補助金・助成金
・クラウドファンディング
・社債の発行

出資だけに依存せず、複数の調達手段を組み合わせることで資金繰りの安定につながります。

まとめ

出資金は返済不要という大きなメリットがある一方で、経営介入や元本リスクなど、出資側・受ける側の双方に注意点があります。
会社設立時や増資時には出資を上手く活用することで事業の成長に役立ちますが、性質をよく理解したうえで使うことが大切です。

必要に応じて専門家に相談しながら、最適な資金調達方法を選択することをおすすめします。

さらに参照してください:

受領書とは何か。初心者にもわかる基本と使い方ガイド

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