企業経営や個人事業を行っていると、「外注費」という勘定科目を耳にする機会があると思います。
しかし、「外注費と給与の違いがよく分からない」、「支払手数料とどう区別すればいいの?」 と迷う方も多いのではないでしょうか。
この記事では、外注費の意味から仕訳例、給与との違い、そして税務上の注意点まで、会計実務の専門家が初心者にもわかりやすく解説します。
正しく処理することで、税務調査でのトラブルを防ぎ、経理の信頼性を高めることができます。
🔹 外注費とは?
外注費(がいちゅうひ)とは、会社内部ではなく外部の法人や個人に業務を委託した際に支払う費用を処理するための勘定科目です。
たとえば次のようなケースが該当します:
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デザイナーにロゴやパッケージの制作を依頼した
-
フリーランスのエンジニアにシステム構築を任せた
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外部の製造業者に部品加工を依頼した
こうした「業務の一部を外に出す(外注する)」費用は、給与ではなく外注費として処理します。
💡 外注費の仕訳例
① 取引先が法人の場合
例:デザイン会社にパッケージ制作を依頼し、10万円を普通預金から支払った。
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 外注費 100,000円 | 普通預金 100,000円 |
→ 源泉徴収の必要はありません(支払先が法人のため)。
② 取引先が個人の場合
例:個人プログラマーにウェブサイト制作を依頼し、報酬10万円のうち1万円を源泉徴収した。
| 借方 | 貸方 |
|---|---|
| 外注費 100,000円 | 普通預金 90,000円 |
| 預り金 10,000円 |
→ 個人への報酬の場合は、源泉所得税の控除(通常10.21%)が必要です。
🔸 外注費と支払手数料の違い
混同されやすい勘定科目に「支払手数料」があります。
どちらも外部に支払う費用ですが、次のように区別します。
| 区分 | 主な対象 | 勘定科目 |
|---|---|---|
| 外注費 | 製造・業務委託などの実作業 | 外注費 |
| 支払手数料 | 専門家への報酬(税理士・弁護士など) | 支払手数料 |
つまり、実務作業を請け負わせるなら「外注費」、
専門的な知見に対する報酬なら「支払手数料」と覚えておくとよいでしょう。
⚖️ 外注費と給与の違い
税務上、最も注意が必要なのが外注費と給与の区別です。
なぜなら、扱いを誤ると源泉徴収や消費税の計算を間違えるリスクがあるからです。
| 区分 | 消費税 | 源泉徴収 | 社会保険 | 判断基準 |
|---|---|---|---|---|
| 外注費 | 課税対象 | 原則必要(個人) | 不要 | 成果物に対する報酬 |
| 給与 | 不課税 | 必須 | 必須 | 労働時間・指揮命令に従う |
✅ 判断のポイント(国税庁基準)
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指示・監督のもとで働いている → 給与扱い
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成果物を納品して報酬を得る → 外注費扱い
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材料や道具を自分で負担 → 外注費扱い
🚨 外注費が給与と判断された場合のリスク
税務調査で外注費が「給与」と判断されると、次のような追加負担が発生します。
-
源泉所得税の追徴課税
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仕入消費税控除の否認
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延滞税・加算税の支払い
たとえば420万円を外注費で処理していた場合、
およそ80万円前後の源泉所得税+42万円の消費税控除否認額が発生するケースもあります。
正確な科目区分が、会社の税務リスクを減らす鍵です。
💬 外注費のメリットとデメリット
メリット
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社会保険料の負担がない
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年末調整が不要
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源泉徴収計算がシンプル(10.21% or 20.42%)
デメリット
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消費税が課税される
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契約内容次第で給与扱いになるリスクがある
✅ まとめ:外注費と給与を正しく区別してトラブルを防ごう
外注費は、外部の法人や個人に業務を委託した際の報酬を処理する重要な勘定科目です。
しかし、給与との区別を誤ると追徴課税や税務リスクを招く可能性があります。
契約内容・業務実態・報酬の性質を総合的に判断し、
正しい勘定科目で処理を行いましょう。
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