外貨建取引とは

外貨建取引とは?外貨建取引等会計処理基準をわかりやすく解説

海外企業との取引が増える中で、円ではなくドルやユーロなど「外貨」で行う取引も一般的になってきました。しかし、外貨建ての取引を日本の会計帳簿にどのように反映させるのか、疑問に思う方も多いでしょう。

本記事では、外貨建取引の基本から、会計処理における重要なルールである「外貨建取引等会計処理基準」まで、専門家の視点でわかりやすく解説します。

外貨建取引とは?

外貨建取引とは、取引に関わる金額(売買価額・取引価額)が外国通貨で表示されている取引のことを指します。
たとえば、アメリカの企業から商品を仕入れる場合に「100ドル」で契約を結ぶようなケースがこれに当たります。

こうした外貨建取引は、グローバル化の進展により増加傾向にあります。海外との直接取引だけでなく、「外貨建て投資信託」や「海外債券」などを通じて、間接的に関わる企業や個人も少なくありません。

外貨建取引では、まず外国通貨を日本円に換算して記帳する必要があります。このときに用いる為替レートは取引日ごとに異なり、銀行などが公表する為替相場を基準にします。

外貨建取引等会計処理基準とは?

外貨建ての取引を日本円で記帳する際には、日本国内の会計ルールに従う必要があります。
そのルールを定めているのが「外貨建取引等会計処理基準(がいかだてとりひきとうかいけいしょりきじゅん)」です。

この基準は、企業会計審議会が制定したもので、外貨建取引を財務諸表に正しく反映させるための統一的なガイドラインとなっています。

外貨建取引等会計処理基準が制定された背景

外貨建取引を円換算する際、各企業が自由な為替レートを用いると、企業間の比較が困難になり、財務諸表の信頼性が損なわれてしまいます。
また、為替レートを意図的に操作すれば、利益を調整することも可能になってしまいます。

こうした問題を防ぐために、外貨換算に関するルールを統一する必要があり、制定されたのがこの基準です。

外貨建取引の会計処理における3つのポイント

① 取引発生時の換算処理

外貨建取引を帳簿に記録する際は、取引発生時点の為替相場を用いて円換算します。
ここで使用する為替レートは「TTM(Telegraphic Transfer Middle Rate/電信仲値相場)」が原則です。TTMは金融機関が毎営業日に公表する仲値であり、最も一般的な基準レートとされています。

例:
100ドルの商品を掛取引で仕入れ(取引日のレート:1ドル=100円)
→ 記帳:仕入高 10,000円/買掛金 10,000円

② 決済時に為替レートが変動した場合

仕入から支払いまで時間が空くと、決済時点の為替レートが変動していることがあります。
その場合、再評価を行い、差額を「為替差損益」として処理します。

例:
仕入時:1ドル=100円/決済時:1ドル=150円
→ 支払時に2,000円の「為替差損」が発生

③ 決算期末の換算処理

期末時点で未決済の外貨建債権・債務がある場合は、期末レートで再評価します。
これにより、為替変動の影響を適切に反映させ、正確な財務状況を示すことができます。

例:
買掛金50ドル(簿価5,000円)を期末レート1ドル=110円で再評価
→ 評価差額500円を「為替差損」として処理

為替換算のタイミングを誤ると損益に影響

外貨建取引では、「取引日」「決済日」「決算日」の3つのタイミングで換算が行われます。
このいずれかを誤ると、為替差損益が誤って計上され、最終的な損益計算に影響を与えてしまう可能性があります。
経理担当者は、適用するレートと換算タイミングを正確に把握し、継続的に適用することが重要です。

まとめ:外貨建取引は正確な換算処理がカギ

外貨建取引は、海外との取引を行う企業にとって避けて通れない会計処理です。
「外貨建取引等会計処理基準」に基づき、正確な換算レートとタイミングで処理を行うことが、信頼できる財務情報を作る第一歩となります。

特に中小企業や個人事業主の場合、取引ごとに異なる為替レートをどう扱うかで利益額が変動することもあるため、慎重な対応が求められます。

さらに参照してください:

企業結合に関する会計基準とは?わかりやすく徹底解説!