時価ヘッジとは

時価ヘッジとは?繰延ヘッジとの違いや仕訳方法、税効果会計まで徹底解説

企業の資金運用や投資活動が多様化する中で、金融商品の価格変動リスクを管理する「ヘッジ会計」の重要性は増しています。

中でも「時価ヘッジ」は、デリバティブ取引を活用してリスクを回避する手法としてよく利用されます。

しかし、仕訳方法や繰延ヘッジとの違い、税効果会計の適用まで理解するのは意外と難しいものです。

本記事では、初心者でもわかるように、時価ヘッジの基本から実務での会計処理まで丁寧に解説します。

ヘッジ会計とは?

「ヘッジ」とは、リスクを回避する取引のこと。株式や債券、外国為替など、金融商品には為替変動・金利変動・価格変動などのリスクが伴います。ヘッジ会計は、こうしたリスクヘッジの効果を会計上正しく反映させる方法です。

例えば、現物株を保有していて株価下落のリスクがある場合、先物取引を売ることで損益を相殺する取引があります。こうした損益の相殺効果を同一期間に計上できるのがヘッジ会計の特徴です。ただし、すべてのヘッジ取引がヘッジ会計に該当するわけではなく、一定の要件を満たす必要があります。

ヘッジ会計の要件

ヘッジ会計を適用するには、事前テストと事後テストの両方をクリアすることが必要です。

  • 事前テスト
    ヘッジ対象とヘッジ手段を明確化し、リスク回避の有効性を文書化して証明すること。

  • 事後テスト
    ヘッジ取引後に有効性が継続しているかを評価。評価基準は時価やキャッシュフローの変動幅で「80%〜125%」に収まるかが目安です。

評価が基準を満たさない場合は、ヘッジ会計の適用を中止する必要があります。

時価ヘッジとは?

時価ヘッジとは、決済前のデリバティブ取引を時価評価し、ヘッジ対象の損益と同一期間に計上する手法です。主に売買目的ではない有価証券の価格変動リスクを回避する際に使われます。

  • 対象資産や負債:株式、債券、預貯金など

  • 損益計上のタイミング:ヘッジ対象とヘッジ手段の損益を同じ会計期間で認識

  • 税効果会計:時価ヘッジでは適用されない

時価ヘッジの仕訳例

  1. 社債購入時(ヘッジ取引あり)

借方 金額 貸方 金額
その他有価証券 980,000円 現預金 980,000円
  1. 決算時の時価評価

社債時価:95円/口、先物評価損益:+30,000円

借方 金額 貸方 金額
その他有価証券評価損益 30,000円 その他有価証券 30,000円
債券先物 30,000円 先物損益 30,000円

この仕訳により、ヘッジ対象とヘッジ手段の損益が相殺され、社債の時価評価による損益は発生せず、税額にも影響しません。

繰延ヘッジとの違い

  • 時価ヘッジ:ヘッジ対象とヘッジ手段の損益を同一期間に計上

  • 繰延ヘッジ:デリバティブ取引の評価損益をヘッジ対象の損益認識まで繰り延べる

繰延ヘッジは会計上と税務上で評価基準に差が生じるため、税効果会計が適用されます。一方、時価ヘッジは会計上と税務上で損益の認識に差がないため、税効果会計は適用されません。

まとめ

時価ヘッジは、ヘッジ会計の例外的な手法として、デリバティブ取引を利用して資産や負債のリスクを同一期間で相殺する方法です。繰延ヘッジとの大きな違いは「デリバティブ損益をいつ計上するか」にあります。正しい要件を理解し、仕訳や会計処理を適切に行うことが、リスク管理と決算精度の向上につながります。

さらに参照してください:

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